第277話 ∀ガンダム その2 ガンダムにおヒゲがありまして!?編

 ターンA語りも2回目、主役ロボである「ターンAガンダム」について語りたいと思います。サブタイトルは作中でターンAを「ガンダム」と呼んで激しく敵意を燃やすコレン・ナンダーに対して、ディアナ・ソレルが説得のために言い放ったセリフから頂きました。みんなが内心で思ってたけど、それ言っちゃオシマイだろうってセリフをヒロインに言わせるという荒技ですね(笑)。ときどき、こういうギャグをかましてくれるので、ターンAは「つまらない」と切って捨てられないんですね。


 さて、このサブタイのとおり、ターンAガンダムの一番の特徴はヒゲです(笑)。ガンダムを象徴する「記号」として額にあったV字形のアンテナが、口元に下がってしまった結果としてヒゲみたいになってしまったという。


 これについて、Wikiほかで読んだところによると、デザイナーであるシド・ミードもさすがに悩んだらしく、あの「超合金の生みの親」である玩具デザイナーの村上克司に相談したんだそうですよ。そうしたら、村上克司が「大丈夫」と断言して、理由として自分がデザインした「ゴッドシグマ」を見せたという(笑)。そういえばアレも立派なヒゲがあったな(爆)。アニメ見てないのにロボ玩具を買ってしまった私としては、そう言われると一言もありませんね(笑)。


 確かに最初に見たときは、もの凄いインパクトがありました。それだけで、ある意味「勝ち」ではあったかと思います。絶対に一発でおぼえる衝撃的なデザインでしたから。


 ただ、同時に思ったのは「何だこのパチモンくささは!」だったという(笑)。本作は「ガンダム二十周年」記念作品だったんですよ。それなのに、どうして主役ロボがこんなに「パチモン」くさいのかと(笑)。


 解説しますと、初代『ガンダム』の頃のガンプラブーム当時には、その人気にあやかってガンダムモドキのプラモデルが山ほど出てたんですね。


 中でも特に目立っていたのが「モビルフォース ガンガル」のシリーズと、「ザ・アニメージ」だったという。これ、今回ググるまで「ジ・アニメージ」だと思ってました。それにしても、この偽者臭あふれる「ザ・アニメージ」を出していたアリイが、まさかのちに『マクロス』では公式プラモメーカーになるとは……(笑)。閑話休題。


 何というか、初見の印象がこいつらパチモンプラモくさいなあ、というものだったのですよ。


 実のところ、私はシド・ミードって、そんなに高く評価していないんですよね。映画『ブレードランナー』のメカデザインで有名になった人なのですが、その後に発表されたリメイク系のデザインって、あんまりカッコ良くないという。


 まず、『新スタートレック』の主役航宙艦「NCC-1701D エンタープライズ」(俗に言う「D型エンタープライズ」)ですけど、初見では「何かカッコ悪くなった」という印象だったんですよ。円盤部が楕円形になってますし、エンジンナセルは小さくて短い。それに、エンジンナセルと主艦体をつないでいるビームも湾曲していて、いまいち高速感を感じさせないデザインだったんですね。初代「エンタープライズ」とか、劇場版仕様(いわゆる「A型エンタープライズ」)の円と直線をうまく組み合わせた高速感が無かったんです。見慣れたら「まあ、味はある」という風には思うようになりましたけど、そんなにカッコ良いとは思えなかったんですね。


 それから『YAMATO2520』の「第十八代宇宙戦艦ヤマト」です。こちらはエンプラに比べれば素直にカッコ良いデザインでしたけど、やっぱり何か「コレジャナイ」感がありましたね。


 なので、「シド・ミードにデザインを頼んだ」って時点で、変なのが出てきそうだなあとは思っていたんですよ。そして、実際に蓋を開けてみたら、予想以上に変だったという(笑)。


 もっとも、初期案では本編だとライバルロボである「スモー」に使われたデザインを「ターンAガンダム」として出してきていたそうですから、さすがシド・ミードと言わざるを得ないという(笑)。これについてはスモーの所で語りたいと思います。


 さて、そんな風に初期段階では酷評していたターンAなのですが、本編で映像を見ているうちに、その印象は大きく転換する出来事があったのですよ。


 まず、いきなり石像っぽい形で「ホワイトドール」という神の像として崇められているという描写です。石像みたいな形で岩に覆われた状況で立っていて、現地住民の成人の儀式のお祭りでは、こいつの前で歌いながら踊り狂うという。そういうシチュエーションだと、非常に似合っているデザインなんですよ。本編でそれを見て「さすが富野!」と思いましたね。


 そして、MSとして復活したあとだと、長く放置されていたビームライフルが故障気味で、いきなり発射の際の熱で溶けてしまって無手になったという。それじゃあというので代わりに探し出した武器が、何と「ガンダムハンマー」!


 初代ガンダムが持っていたハンマーそっくりのヤツが倉庫に隠されていて、しばらくの間はそれをメイン武器として使っていたという。一見ガンダムハンマーなデザインなんですが、ジェット噴射するので実はハイパーハンマーだったりします。しかも、初代『ガンダム』ではオミットされたトゲトゲが爆発するギミックまで搭載しているという(笑)。


 これ見て「負けた!」と思いましたね。ハンマー振り回すのが、これほど似合うデザインのガンダムはほかにいません。それまでだと初代ガンダム以外では『Gガン』のボルトガンダムがハンマー振り回して似合ってたんですが、それを上回る似合い方ですよ。


 これまた「さすがは富野!!」ですよ。この蛮族めいた雰囲気の顔に、これほど似合った武器はないでしょう。しかも初代ガンダムの武器で、劇場版では「無かったこと」にされたガンダムハンマーという、正に「黒歴史」な武器をここで復権させ、同時にヒゲガンダムを認めさせてしまった富野監督の荒技には感服しました。


 本体のギミックで言うと、ナノマシン装備で外装が自動修復されたりとか、最終的にはナノマシンを使った「月光蝶」なんて技があって、文明ひとつ滅ぼすことができたりとか、設定的に言うともの凄いマシンだったりはするんですよね。


 あと、胸の中が空っぽだったりするのですが、そこに核弾頭積んでたこともありました。GP-02へのセルフオマージュですね。まあ、牛も積んでましたけど(笑)。


 あ、最後の方で胸からすんごいビーム撃ってたこともありましたが、あんまり印象には残ってないです。


 それから、コア・ファイターは股間にセットされるので、コクピットは股間です(笑)。


 いろいろと特徴的なガンダムではあったりするのですが、とにかくヒゲとハンマーに尽きるという(笑)。そういう印象のガンダムでありました。


 次回はシド・ミードがデザインしたほかのロボやメカについて語りたいと思います。

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