第250話 勇者王ガオガイガー(1997-98年)

 ついに来てしまいました「勇者シリーズ」のTV最終作『勇者王ガオガイガー』(以下、作品名についてはガガガと略記)。前回末尾で私は本作を「日本巨大ロボットアニメの『金字塔』」と書きました。これは、意図して使った表現です。この「意図」については、最後の回で書きます。


 私は、実は本作をリアルタイムでは見ていません。『ダグオン』のときは最初の方を見ていたのですが、それを切ってしまって「勇者シリーズはもういいかな」と思っていたのです。だから、第1話の時点で見なかったのですよ。ところが、周囲の評判が異常に良い。「面白い」「凄く熱い」「絶対見るべきだ」と大絶賛なのです。


 ただ、何分へそ曲がりで凝り性なので、「途中から見るのは嫌」と考え、放送終了後のビデオ全巻販売を待って、レンタルビデオで借りて一気通貫で視聴しました。


 これは成功であり、同時に大失敗でした。「成功」だったのは、この怒濤の連続物語の流れを切らずに最初から最後まで楽しめたからです。


 そして同時に「大失敗」だったのは、「翌週を楽しみにワクワク待つ」感覚を味わえなかったことです。本作はリアルタイムで見ていたら、間違い無く『エヴァ』と同等以上に「翌週を楽しみにワクワク待つ」作品になっていたことでしょう。また、リアルタイムでみていたら、ヲタ友人たちと毎週の内容について熱く語れたはずです。それができなかった。だから、完結を待って見たのは「大失敗」だったと思ったわけです。


 ということで、本作はまずレンタルビデオで全話見ました。それから、DVD-BOXが販売されたときには迷わず購入し、オタク断捨離をしたときも捨てずに、未だに持っています。DVDは何回か通しで見返しています。間違い無く、初代『ガンダム』以外では一番見た巨大ロボットアニメになるはずです。


 ただ、本作が登場するスパロボも含めて、ゲーム類はまったくやっていません。また、公式外伝になっているCDドラマも聞いていません。純粋に本編のみを楽しんでいます。それから、続編になるOVA『勇者王ガオガイガーFINAL』は見ていますが、これは本作とは別作品扱いとして、あとで語りたいと思います。


 以上のことでおわかりかと思いますが、本作に対しては非常に思い入れがあります。最初に見終わったときに「これは巨大ロボットアニメの『出師すいしひょう』だ!」とまで言ったおぼえがあります。この「出師の表」というのは、『三国志』の諸葛孔明が魏に対しての出陣に際して己の覚悟を示すために幼い主君に向けて書いて公表した文章で「これを読んで泣かない者は忠義ある人ではない」とまで言われた名文です。


 そう、私は本作ガガガを「これを見て感涙しない者はロボヲタではない!」と言うくらいに気に入っているということです。まあ、これは言い過ぎだとは自覚しております。本作にも色々と欠けている要素はあり、特に「勇者シリーズ」の一作として見た場合は、フォーマットからだいぶ外れていたりします。また、かなりリアルロボの要素をまぶしてあるとはいえ、完全なスーパーロボットになりますので、リアル系の信奉者からすると好みからは外れているでしょう。また、次回解説しますが展開面でどうしても好みに合わないというのもあるかと思います。ですので、本作を「面白くない」「嫌い」という人がいても、それは個人の趣味嗜好なので良いと思います。


 本作の特徴は、何と言っても、その「熱さ」にあると思います。全般的に演出や演技の熱量が凄い。主題歌やBGMも熱い。


 そして、その熱量を支えるのが「ファイナルフュージョン承認!」や「それが勇者だからだ!!」に代表されるケレン味たっぷりの演出や決めゼリフであり、センス・オブ・ワンダーに溢れたSF設定であり、マニアックなヲタ的知識であるのです。


 本作のストーリーには、いろいろと「伏線」や「謎」が散りばめられています。ただし、それらは各回の「熱い」ストーリーを阻害する要因にはなっていません。その「謎」に気を取られて各回のストーリーに没頭できないという要素ではないのです。そして、これらの「伏線」や「謎」は最終回までにきちんと回収されます。多少の拾い残しはありましたが、それらは続編『FINAL』で回収されます。


 何よりも、本作は恐ろしいまでの高いレベルで「子供向け」と「マニア向け」を両立させているんです。本来のターゲット層である子供向けの作品として、多少難しい要素はあるものの、それは「何か凄そうなこと言ってる」程度のフレーバーとして、物語本編は楽しめる作品になっています。しかも、子供向け作品としてのテーマも示されているという。


 第1話から、捨てられた「まだ使える機械や玩具」が組み上がって悪の巨大ロボとして襲ってくるという展開で、「使い捨て」「ゴミ問題」について考えることを提起しているという。これは最終回間際でも本作のダブル主人公の少年側(設定上は脇役とされているようですが、私はダブル主人公と考えます)である天海あまみまもるの述懐として繰り返し提起されています。ほかにも、「優しさ」や「思いやり」についてがテーマの回があったりします。


 そして、本作の敵である「ゾンダー」は、「人間のストレス」をエネルギー源として巨大ロボや破壊メカを構成していきます。なので、特に前半部については、毎回の敵は身の回りのストレスが原因として描かれています。子供にもわかりやすい身近なテーマが多いんですね。


 その一方で、フレーバーとしてまぶされる要素にはマニアックな要素も多いという。ゾンダーの破壊メカのモデルが史上最大の列車砲「ドーラ」だったり、新幹線が要素の場合はきちんと型式番号まで出てたりとか。それを、味方のオペレーターとか、護の友達のマニア系少年がいちいち解説したりするんですね(笑)。


 また、本作では「巨大ロボが戦うと街が破壊されてしまう」というマジンガー以来の巨大ロボが持っていた問題点について、作中で明快な「対策」を提示しているのですよ。これは非常に画期的でした。これについては、主役ロボ「ガオガイガー」の装備を語るところで詳述したいと思います。


 といったところで、今回は時間が来ました。最後に次回予告……と書こうとしたところで、とんでもない情報を拾ってしまったので、予告編風にこう行きましょう。


 君たちに最新情報を公開しよう! 何と2018年9月25日から『FINAL』の続編にあたる漫画『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~the COMIC』のWeb公開が開始された! これは「ホビージャパン」のサイト上での公開となる。さあ、君も「ホビージャパン  覇界王」で検索して、この世紀の対決の目撃者となるのだ!


 これ、小説版は矢立文庫で既に第37話まで公開されているみたいですね。全然知りませんでしたよ。


 さて、話しを元に戻して、次回はガオガイガーについて語って行きたいと思います。本作の場合の各回の最後の締めは、これで通すべきでしょう。


「次回も、このサイトでファイナルフュージョン承認!」

「これが勝利の鍵だ!」 → ガオガイガー

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