第239話 機動新世紀ガンダムX(1996年)

 さて、今回から語るのは「平成ガンダム三部作」最後の作品、そして長きにわたって作られてきた「テレ朝系ガンダム」の最後の作品でもある『機動新世紀ガンダムX』(以下『X』と略記)です。平成時代に作られたガンダムはほかにもあるのに、『G』『W』『X』が俗に「平成ガンダム三部作」と総称されるのは、連続制作されているのがこれらだけだからでしょう。同じ枠だったのに『V』が除かれているのは、これが「宇宙世紀」を舞台にした富野監督の作品であり、ほかの三作とは毛色が違うからでしょう。


 私は本作はリアルタイムで全話見ました。それだけです。本作が登場するスパロボは『α』以降になるため、私は遊んでいません。ノベライズは無く、『コミックボンボン』での連載漫画はあったようですが、私は読んでいません。


 本作に対する一般的な評価と、私個人の評価は、前作『W』とはどちらも百八十度異なります。一般的に言えば、本作は「失敗作」でしょう。Wikiによればプラモの販売数は『W』から二割減で、視聴率は低迷。そのため、早期に「放送短縮」が決まり、全五十二話予定が三十九話に短縮されています。


 これは、初代『ガンダム』が打ち切られて以来のことで、話数もこれまでのガンダムで最短になっています。放送時間も金曜十七時から土曜早朝六時半という辺鄙へんぴな時間帯に移され、さらに視聴率が低迷しました。また、関連グッズや書籍等も非常に少なくなっています。後年に「マスターグレード」などでプラモ化されるのも遅くなっています。


 ただし、この放送短縮や時間帯移動は本作の不人気のせいではなく、テレビ局の編成上の都合によるものとする解説もネット上では見かけます。ただ、実際問題として視聴率は低迷し、プラモは売れなかったのだから「不人気」には変わりはないかと思います。


 しかしながら、私個人の評価で言えば、ガンダムシリーズでも上位に入る作品なのですよ。作品としてのバランスが取れていて、放送が短縮されたにもかかわらずストーリーが破綻していないんです。描かれているキャラも、多少のこだわりの強さやおかしい部分はありますが『W』みたいなブレ方をしていたり脳内お花畑だったりエキセントリックだったりするようなヤツはいないし、『V』のように壊れているヤツもいない。主人公ガロード・ランも、ヒロインのティファ・アディールも真っ当に成長していき、変な風に歪まない。周囲の大人キャラも自分たちのトラウマを前向きに克服したり、過去と向き合った上で未来に進んで行ったりする。あ、ラスボスのフロスト兄弟は例外ですけど。


 何というか、非常に「健全」なんですよ。子供も見るアニメとして、ものすごく「真っ当」という。


 ただ、逆に言うと人気が出なかったのかもしれない、とは思います。初代『ガンダム』にせよ『エヴァ』にせよ、放送当時の基準で言えば主人公のキャラは非常に「後ろ向き」なタイプでした。ストーリーも難解で、子供には理解しがたいような部分が多々ありました。しかし、それだからこそ大ヒットしたのではないかという所はあるのですよ。


 そして、「ガンダムシリーズ」というのは多かれ少なかれ初代『ガンダム』の系譜を受け継いでいて、大なり小なり「歪んでいる」部分はあるんです。


 だから、「健全」で「真っ当」な本作は、ある意味「ガンダムシリーズ」の中では異端です。とはいえ、同じ異端児である『G』ほどはじけてもいない。そのあたりが、本作がヒットしなかった原因なのかもしれません。


 とはいえ、私の中では本作の評価は変わりません。ガンダムシリーズの中では初代『ガンダム』『Gガン』『0083』『Seed』の次あたりに位置する高評価作です。


 ストーリー的に言うと、本作は地球とスペースコロニーの戦争が際限なく拡大して「勝利者などいない」結果に終わってしまった世界の話です。第1話冒頭で、群をなして地球に落ちていくスペースコロニーを見たときには、余りの光景に一瞬唖然としてから大爆笑してしまいました。


 このため、地球は荒廃しきっており、荒れ果てた荒野には秩序もなく、無法者が戦争中に使われていたMSを勝手に乗り回して好き放題暴れているという世界観です。『ガンダム』というよりは『ザブングル』に近い感じですね。


 そんな世界で孤児としてMS狩りやジャンク屋をしながら生きてきた少年ガロード・ランが、「ニュータイプ」として狙われる少女ティファ・アディールに一目惚れして、彼女を守るために偶然手に入れた戦争中の高性能MS「ガンダムX」で戦っていくというのがメインストーリーになります。


 この一号主役ロボ「ガンダムX」というのは、デザイン的にはやたらとデカいビーム砲を積んでいるのが特徴です。そして、発射形態時には巨大な受光板を背面に展開するという。この受光板がXの形をしているんですね(笑)。


 これが、本機の最強兵器である「サテライトキャノン」です。これ、月面に設置してある施設からマイクロウェーブによるエネルギー送信を受光板で受けて、それを動力源として強力なビームを発射する仕組みなんですね。このビーム、何とコロニーを破壊するほどのパワーがあるという……まあ、ゼロのツインバスターライフルもそのぐらいのパワーはありましたが(笑)。


 そして、このサテライトキャノンのシステムを起動するためにはニュータイプ能力が必要なんですね。そのため、ニュータイプでないガロードには起動できず、ティファしか起動できないという。ちゃんとヒロインに意味があるんですよ。


 なお、本作における「ニュータイプ」は、宇宙世紀の作品におけるニュータイプとは多少意味合いが異なっているとされていますが、私が作品を見ていた限りでは、能力的な部分や、作中での扱われ方には大差はありませんでした。


 さて、この必殺兵器のサテライトキャノンは強力な一方で、当然ながら月からマイクロウェーブを受けられないと発射できません。このため地球上での使用には非常に制限がかかります。


 だから、第1話のサブタイトルが「月は出ているか?」なんですね。このサブタイは本作を象徴するサブタイでもあるので、次回、ガンダムXの続きと、その後継機である「ガンダムダブルX」について語る際のサブタイとして使用したいと思います。ということで、次回……


「月は出ているか?」

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