第232話 機動戦士ガンダム 第08MS小隊 その5 生きてアイナと添い遂げる!編

 08小隊語りも5回目、キャラ編の最初は主人公シロー・アマダについて語りましょう。なので、サブタイトルはノリスとの戦いの際にシローが叫んだセリフからいただきました。彼らを一番象徴するセリフかなと思いまして。


 さて、本作主人公のシロー・アマダですが、名が体を表しています。「アマダ」です。「甘だ」なんです。作中でも散々「甘ちゃん」呼ばわりされてます。それだけ理想家肌の熱血漢なんですね。


 部下には「全員生きて帰れ」と言ったり、上官からの査問会で「敵とだってわかり合える」と主張したりするという。


 ただ、こいつの理想家っぷりは、実のところ筋金入りだったりします。戦場の残酷さや現実を知らないで理想を振りまいてる脳内お花畑じゃないんですよ。


 何しろ、こいつの出身コロニーはサイド2の8バンチ「アイランド・イフィッシュ」だったりします。これが何を意味するのか?


 このコロニーって、初代『ガンダム』の毎回冒頭で「人類は自らの行為に恐怖した」のナレーションをバックにシドニーに落ちてきたコロニーなんですよ! コロニー名とかは、もちろん後付設定なんですが。


 しかも、その前段階としてジオン軍がコロニー住人を毒ガスで虐殺しているんですが、その現場に居合わせて奇跡的に生還しているという。目の前で家族や友人をジオン軍に虐殺されているんです。


 そういう経験をしていながら、理想家肌の熱血漢という、とんでもないヤツなんですよ、こいつは。普通だったら復讐の鬼と化して「ジオン軍人絶対許すまじ」と『Zガンダム』のバスク・オムみたいな感じになるはずなのに、そうなってないという。


 『ヤマト』の古代進だって、最初は家族の仇だったガミラス人を憎んで殺そうとしていたのを、戦いの中で敵も人間だとわかって、徐々に考えを変え、最後は「愛し合うことだった」とか言ってるんです。最初から「愛し合うことだった」とは言ってないんですよ。


 ところが、こいつの場合はその途中のプロセスをすっ飛ばして最初から理想家肌なんですね。


 いや、もしかしたら、戦争開始時の故郷の虐殺に遭遇した時期から第1話までの間にそういう葛藤とかをくぐり抜けてるのかもしれないんですが、それが描かれていないので、とんでもないヤツに見えてしまうという。


 Wikiによると、後期に監督を引き継いだ飯田監督は、この点が嫌いだったということで、彼が描いた漫画版では、そのあたりの葛藤を補完しているそうなのですが、未見です。


 ただ、『08小隊』が『W』と違うのは、シローの理想主義が「甘ちゃん」と周囲に切り捨てられることなんですね。08小隊の部下たちも最初はバカにしていましたし、査問会では嘲笑される。


 また、シロー本人も、自分の理想にしがみついて味方を犠牲にしたりはしないんですよ。前に書いたトップ少尉とキキの村のゲリラとの戦いでは、途中までは戦闘を止めようと頑張るのですが、どうにも止められないという状況になったときは、自らバズーカ砲でトップ少尉が乗っている旧ザクのコクピットを狙って破壊し、彼女を殺しているんです。


 このあたり、やるべきことはやってるんです。特に「部下を殺さない」という部分については、きちんと有言実行しているので、最初はバカにしていた08小隊のメンバーも最終的にはシローを認めて心服しているという。


 また、パイロットとしての腕はかなり高く、現場での臨機応変の対応力も高いという。何しろジム三機を撃破したザクを相手にボールで近接格闘戦を演じて相打ちに持ち込めるんですから(笑)。また、雪山で遭難しかかったときにビームサーベルを使って雪を溶かして即席の風呂を作ったというエピソードは有名です。まあ、そこでアイナと一緒に風呂に入っちゃうから有名なんでしょうけど(笑)。


 それに、指揮官として小隊の指揮をとっている部分に関して言えば、命令などに大きな破綻はありません……ときどき指揮を忘れて本人が突貫したり、本人が一番危険な所を担当しちゃったりすることはありますが(笑)。


 ただ、そういったパイロットや指揮官としての能力はともかく、行動については軍人としては問題がありすぎます。まあ、だからこそ査問会なんかにかけられたりするんですが(笑)。


 何しろ命令無視、敵との通謀疑惑、謹慎中に無断出撃をやった上に、最終回では「軍を抜ける!」宣言ですよ。軍からの脱走、敵前逃亡で銃殺です。もっとも、その「敵」=「ギニアスのアプサラスⅢ」に特攻して相打ちになって戦闘中行方不明MIA扱いですけど。


 アイナとは、第1話からいきなり「二人で協力しないと生き残れない」シチュエーションで協力して生還することで恋愛感情が芽生えるという。


 ……それって実は「吊り橋効果」なんじゃね?(爆)


 もっとも、この「協力しないと生き残れない」シチュエーション、さらに雪山でも同じこと繰り返すんですね。コレはもうどうにもならんだろうと(笑)。


 最後はアプサラスⅢから追い落とされたアイナを奇跡的に拾って、二人でギニアスに特攻して相打ちに持ち込み二人とも行方不明になったところで本編は終わります。


 ただ、特別編『ラスト・リゾート』の最後には、片足を失いつつも生きていたシローと、妊娠中のアイナの姿がワンシーンだけ見られて、二人の結末についてはハッピーエンドをむかえたことが明らかになります。


 この筋金入りの理想家肌の性格については、正直そんなに好きになれないのですが、それが作中でも「甘ちゃん」と切り捨てられており、結局はシローとアイナ以外には通じなかったというところが、本作『08小隊』が『W』とは違うところなのかなあと思っています。


 なお、声優は『マイトガイン』で主人公旋風寺舞人を演じた檜山修之です。のちに『ガオガイガー』の主人公獅子王ししおうがいや『ガサラキ』の主人公豪和ごうわユウシロウも演じている、90年代の「ミスター主人公」ですね。


 次回は、そのヒロイン、アイナについて語りたいと思います。

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