第178話 勇者特急マイトガイン(1993-94年)

「銀のつばさに、のぞみを乗せて、ともせ平和の青信号! 勇者特急マイトガイン、定刻どおりに只今到着!!」


 というわけで今回は『勇者特急マイトガイン』です。本作は放送前にアニメ誌で情報を仕入れたときから興味があったので、リアルタイムで全話見ていました。この名乗り口上はWikiだと漢字表記されてましたが、私は「つばさ」と「のぞみ」はひらがなで書きます。なぜなら、これは列車名だからです。


 名乗りバンクシーンでは、主役ロボであるマイトガインは「銀のつばさに」のシーンは右肩、「のぞみを乗せて」のシーンは左肩を前に出し、「ともせ平和の青信号」でひたいの青色信号を指で誇示しています。これ、右肩が山形新幹線「つばさ」用のJR東日本400系新幹線、右肩が東海道・山陽新幹線「のぞみ」用のJR東海・西日本300系新幹線の先頭車両だからなんですね。


 この新幹線は、いずれもリアルタイム当時の最新車両です。400系の営業運転開始が1992年7月で2010年4月に廃車されています。300系の営業運転開始が1992年3月で2012年10月に廃車されています。前年の『ダ・ガーン』放送開始時(1992年2月8日)にはギリギリで300系は営業運転を開始していません。このためか、ダ・ガーンXの脚部に変形する新幹線は300系の先行試作車両(1990年製造)ですから。


 このように、本作は勇者シリーズ三種の神器の中でも新幹線を特にフィーチャーしています。ただ、仲間の勇者ロボにはパトカー、消防車、ドリル(笑)がちゃんと居ます。ドリルは二号主役ロボのマイトカイザーにも居ますね。また、仲間ロボもパワーアップがあるのですが、それでトライボンバーがパワーアップしたバトルボンバーは胸ライオンロボになります。ただ、たてがみが無いので雌ライオンだったり(笑)。


 さて、本作は勇者シリーズでも最大の異色作で、大幅な路線変更がされています。まず、勇者ロボは宇宙から来た生命体でも、地球の化身でもなく、人間が作った「超AI」搭載ロボです。このため破壊されても修理が可能なほか、複製すら可能です。


 実際、作中で「ブラックマイトガイン」という、悪者が設計図をコピーして作った偽者が出てきますが、性能的には本物と同等です。さらに「超AI」もコピーされていたという。ところが、完全コピーしてしまったので、正義の心までコピーされてしまって主人公側に協力してしまうという(笑)。結局、作った悪者に洗脳されてマイトガインと戦って破壊されてしまうのですが、最終回ではこいつの超AI搭載ロボであるブラックガインも修理されているシーンが描かれていました。


 そして、主人公の旋風寺せんぷうじ舞人まいとは高校生でこれまでの少年役では最年長であるだけでなく、マイトガインのパイロットでもあります。今までの勇者シリーズの少年役は、ロボの友達だったり指揮官だったりはしたものの、搭乗や操縦はしませんでしたが、今回初めてロボの操縦者となったわけです。


 この舞人は、旋風寺コンツェルンという大財閥の当主だったりもします。このマイトガイン世界の設定年台は、何と「昭和百二十五年」! 既にして、現実世界(リアルタイム当時平成五年)のパラレルワールドになっているわけです。マイトガイン世界では、作中時間の約五十年前(昭和七十五年頃)に世界中の化石燃料が枯渇し、鉄道が輸送のすべてを担っているという設定です。旋風寺コンツェルンは、その鉄道を握っている大財閥なんですね。


 だからか、マイトガインは新幹線二台と蒸気機関車風の大型メカ「ロコモライザー」が合体して完成するロボなんですね。右腕になる400系新幹線はマイトウイングという超電導ジェットに変形し、こちらに舞人が乗ります。左腕になる300系新幹線はガインという超AI搭載ロボに変形します。こいつがコピーされたのがブラックガインです。


 また、仲間の勇者ロボのボンバーズも電車から野獣形態とロボ形態に変形した上で合体します。それから、野獣形態にも変形し、先に書いたように後半は胸ライオンロボのバトルボンバーに合体します。ダイバーズの方は個別メカはパトカーや消防車やドリル戦車だったりするものの、ロボ形態や合体ロボ形態のガードダイバーのほかにTGV風の列車形態にも合体するなど、必ず鉄道モチーフのメカになります。


 二号主役ロボのマイトカイザーも、個別のメカはドリル戦車だったり建設重機だったりしますが、やっぱりドリル特急という列車形態にも合体します。なお、マイトカイザーのみ超AIを搭載せず、舞人が操縦する完全乗り込み型ロボになります。これ、勇者シリーズで唯一の自意識を持たない完全乗り込み型勇者ロボじゃないかと思うんですよ。ダグオンも、ガオガイガーも、人間が合体することで自意識を持つ勇者ロボになるタイプなので、操縦のみの勇者ロボはこいつだけかなと。


 このマイトカイザーの各部パーツがマイトガインと合体することでグレートマイトガインとなります。さらにはマイトガンナーという蒸気機関車風の弾丸列車と超電導キャノン砲に変形するロボもいて、こいつが変形するキャノン砲を接続した状態がグレートマイトガイン・パーフェクトモードです。この状態で必殺パーフェクトキャノンを発射するときの発射シークエンスが、めっさ『ヤマト』の波動砲だったりするんですよ(笑)。


 そう、本作が勇者シリーズとして異色なのは、ただロボの扱いが変わったからだけじゃないんですね。全般的にメタネタやパロネタが多用されているというのもあるのです。


 次回は、そのメタネタやパロネタを中心に語って行きたいと思います。

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