第135話 トランスフォーマー・ザ・ムービー(1986/89年)

 さて、今回の『トランスフォーマー・ザ・ムービー』は少し特殊です。何しろ、劇場では日本未公開ですから。アメリカでは1986年に公開されているものの、日本でのチャリティー上映(東京と大阪の二か所のみ)と、ビデオ&LD(!)の発売が1989年なので、本来は1989年の作品としてカウントすべきでしょう。ただ、ストーリーライン上、この話を先にしておかないと『トランスフォーマー2010』の説明が煩雑になってしまうので、こちらを先に書きます。


 実は、私はその1989年のチャリティー上映を見に行ってるんですよ! これ、ちょっと自慢です。弟がS.T.A.R.S会員だったんで、それで東京・虎ノ門の方の上映会に応募できて、当選したんですよ。上映されたのは、字幕付き英語版の方でした。ここで、英語版だとスタースクリームがキーキー声だというのを知って衝撃を受けたという。また、トークショーのゲストとしてコンボイ司令官役の玄田哲章さんが来場して、大きなお友達(私含む)を狂喜乱舞させていました。トークショーの最後に、高校生くらいの男子が「コンボイ司令官がんばってー!」と叫んだのに、コンボイ声で「ありがとーう!」って答えてくれてたのが印象に残ってます。


 さて、この『ザ・ムービー』ですが、作画は東映動画です。そして、TV版『トランスフォーマー』と比べると格段に作画が向上しています。トランスフォーマーの変形シーンも、あのTV版のグニャグニャ変形は影も形もなく、かなり複雑なホットロディマスの変形まで玩具に忠実に描いており、チャリティー上映の劇場でそのシーンを見たときには驚愕したものです。


 ただ、それでも作画ミスがあったりするところがご愛敬(笑)。同じキャラが二人いたりとか、ときどきあります。もっとも、新航空参謀サイクロナスが二人いたのは、もともとは同型キャラが存在する設定だったのが変更になったためらしいのですが。


 その一方で、ストーリーの方は非常にわかりやすい展開です。サイバトロンとデストロンの闘争は続いており、サイバトロンが逆襲しようとしていたところにデストロンが先制攻撃をかけて決戦となります。


 ここで、TV版では何度撃たれようがバラバラにされようが死ななかったトランスフォーマーたちが、お互いの武器の一撃であっさり死亡します。劇場映画なんでアメリカのTVコードに縛られていないからキャラ殺してもいいんですね。というわけで、TV版では不死身だったトランスフォーマーたちが、あっさり死にまくります(爆)。


 このあたりは、『2010』でメンバー交代してるのを知ってたので、上映時には特に驚いたりはしませんでした。それに『2010』の1986年時点でも「商品入れ替えのため」という大人の事情だろうなあというのは既に理解していましたし(笑)。


 そして、その大人の事情はコンボイ司令官とメガトロン様にも容赦なく襲いかかるのでした。TV版でのダメダメさ加減が嘘のように無双しまくるコンボイ司令官に対して、メガトロン様は最初は正々堂々と挑むのですが、それで負けそうになると命乞いをして油断させて隙を突くという卑怯な手を使ってコンボイに瀕死の重傷を負わせます。


 ただ、その代償としてメガトロン様も重傷を負い、サウンドウェーブに助けられて何とかアストロトレインに乗って逃走します。


 ところが、アストロトレインが「重すぎるから何とかしろ」と文句を言ったので、重傷者を捨てようということになり、元気だったスタースクリームがメガトロン様やほかの重傷者たち(スタースクリームの部下のジェットロンも多数)を機外に放り捨ててしまいます。このときはサウンドウェーブも見殺しにしてたり。


 さらに、それでスタースクリームが例によってニューリーダーに名乗りを上げるものの、ビルドロンが異議を唱えて自分たちこそニューリーダーにふさわしいとデバスターに合体したり、サウンドウェーブまで「お前らバカ、サウンドウェーブ賢い」とか言ってニューリーダー争いに参戦したりと混沌とした状況になります。


 まあ、それでも何とかスタースクリームが新破壊大帝として戴冠しようとしたときに颯爽と登場したのがガルバトロンとその副将格のサイクロナス、そしてスウィープス艦隊でした。こいつらは、実は宇宙に捨てられたメガトロンやジェットロンたちが、惑星喰らいプラネットイーターの移動惑星ユニクロンによって再生された姿だったのです。


 生まれ変わって、より凶暴な性格になったガルバトロンは、容赦なくスタースクリームを消し炭に変えてしまうと、新破壊大帝として再びデストロンを掌握します。そしてユニクロンに再生してもらったときの約束を果たすべく、サイバトロンのシティコマンダー・ウルトラマグナスを追います。


 そのウルトラマグナスですが、瀕死のコンボイ司令官から、サイバトロンのリーダーのあかしである「マトリクス」を託されます。このマトリクスがユニクロンの狙いでした。マトリクスをウルトラマグナスに託したコンボイ司令官は死亡し、その意志を継いだウルトラマグナスはマトリクスを奪われないように宇宙へ逃げますが、ガルバトロンたちに追い詰められて、やむなくマトリクスの力を解放しようとするものの、真の後継者ではなかったので解放できず、バラバラにされてマトリクスを奪われてしまいます。


 そこへサイバトロンの若き騎士ホットロディマスと、その友人の地球人の少年ダニエル(『トランスフォーマー』に登場したスパイクとカーリーの間に生まれた子)が流れ着き、現地惑星在住のジャンキオンと呼ばれるトランスフォーマーたちと一触即発になるものの、何となく踊りを踊って和解するという超展開(笑)。このあたりのバカノリはいかにもトランスフォーマーです。


 そのジャンキオンたちにウルトラマグナスも修理してもらって、マトリクスを取り戻しに行くことになります。


 その一方でガルバトロンは、ユニクロンがマトリクスを恐れていることに気付いて、マトリクスを解放してユニクロンを倒そうとしますが、当然ながら解放できず(笑)。逆にユニクロンにセイバートロン星を滅ぼす決意をさせてしまいます。


 そこで正体を現すユニクロン。何と、その実体は惑星を喰らう巨大惑星が変形する史上最大のトランスフォーマーだったのでした。これ、当時としてはトランスフォーマーに限らず、紛れもなく史上最大の巨大ロボです。それ以前の最大がマクロスの身長千二百メートルですから、桁違いの巨大さです。ガルバトロンを差し置いてのラスボスですが、それも当然と思える大迫力の悪ボスなのです。


 ちなみに、英語版で演じてるのは名優オーソン・ウェルズ! まあ、日本だと英語教材「イングリッシュアドベンチャー」とかで有名だったりもするんですが(笑)。何と、このユニクロンを演じた『ザ・ムービー』が彼の遺作なんですね。閑話休題。


 危うし、セイバートロン星! となったところにホットロディマスが登場! マトリクスを奪い返すと、ガルバトロンを宇宙の彼方に投げ飛ばします。そしてマトリクスをホットロディマスが手にすると、何とマトリクスの力を解放することができ、それでユニクロンを内部から破壊すると同時に、新司令官ロディマスコンボイに生まれ変わったのでした。ユニクロンは頭部のみがセイバートロン星をまわる衛星になって『2010』にも登場します。


 とにかく、作画が良い上にストーリーは単純明快でわかりやすく、それでいてハラハラドキドキのハイスピードな展開の中に、トランスフォーマーらしいユルさもあり、非常に面白い作品なんですよ。


 私個人としては、普通の映画も含めて、生まれてから今まで見た映画の中でもベスト1の作品だと思っています。


 この『ザ・ムービー』はDVD版が発売された当初に購入したんですが、一度婚活中にオタク断捨離したときに売ってしまったんですよね。それを後悔して、のちに買い戻そうとしたんですが、すでにヤフオクとかで入手するしか方法がなく、結構プレミア価格での中古購入になってしまいました。


 ただ、このDVD版って、日本販売のビデオ版の映像を元にしてるんで、画面の縦横比が4:3のアナログテレビサイズなんですよ。今回ググってみたら、海外ではリマスター版ブルーレイとか売ってるって書いてあったんですよ。日本でも日本語音声入れたリマスター版で縦横比もムービーサイズのやつを出してくれないかなあとか思ったり。


 また、この当時には英語版の主題歌のCDも購入しています。当然ながら洋楽です。歌詞の翻訳カードが付いていたのですが、そこで「ユニクロン」が「ユニコーン」と誤訳されていたんですよ……と購入者しか知らないトリビアを語りたかったのに、Wiki読んだら、そのこともしっかり書いてあったんで、ちょっとガッカリしました(爆)。これもオタク断捨離時に売ってしまったんですよね。


 ということで、ストーリー的には『ザ・ムービー』の流れを受ける形で始まるのが『トランスフォーマー2010』になるわけなので、次回から語って行きたいと思います。

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