第130話 機動戦士ガンダムZZ(1986-87年)

 さて、いよいよ1986年に突入……なのですが、実はこの年に作られた巨大ロボットアニメは二本しかありません。そして、両方ともシリーズ物の続編だったりします。前回の最後に書いたように、85年の巨大ロボットアニメのうち、実に三本が打ち切りの憂き目にあっていたということで、時代の変わり目だったのではないかと私は考えました。


 実は、これは「巨大ロボットアニメ」に限ったことでもなかったのです。TVアニメが週四十本放送という狂ったようなアニメバブルがはじけ、アニメの制作本数が減っていました。世に言う「アニメ冬の時代」が既に始まっていたのです。アニメ雑誌の休刊も相次ぎました。私が読んでいた『ジ・アニメ』や『マイアニメ』、『アニメック』がこの年から翌年にかけて立て続けに休刊します。


 そんな中で、商品が売れる見込みが高い続編が作られるというのは、ある意味必然だったと言えるでしょう。その「続編二本」のうちの一本が、本作『機動戦士ガンダムZZダブルゼータ』です。主人公機の名称は「ZZダブルゼータガンダム」と順番が入れ替わっていますが、当エッセイでは両方とも「ZZ」と略します。


 さて、このZZですが、私は初期に切りました。ただ、後年になってCS放送で全話見ています。もちろんスパロボでも常連なので、使っています。


 本作について切ってしまった理由は、かなり明確です。これについて私は、高校時代のオタ友人にこう言っています。


「もし、タイトルが『ザブングルZZ』だったなら見ていたと思う」


 そう、本作序盤のコメディタッチの作風が、どうしても「ガンダム」に合わないと思ったからなのです。


 本作がコメディタッチの「明るく楽しい」作風を目指した理由は、理解できます。Zガンダムの暗くてシリアス過ぎる雰囲気と難解な内容は、結局のところ視聴者離れにつながってしまったのだろうと、実際に離れてしまった者のひとりとして想像がつくからです。


 また、富野監督の作風として、暗い話のあとは明るい話になるというのもあり「陰の富野」「陽の富野」は一部例外があるものの、だいたい交互にやっていたので、今度は「陽の富野」の順番だったというのも、当時既に推測していました。


 しかし、それがわかっていてもなお「明るく楽しいガンダム」というのは、肌に合いませんでした。


 だから、私は序盤で本作を切ってしまったのです。その後はアニメ誌で流れを追っていただけなのですが、それを見ているだけでも本作が迷走しているのはわかりました。


 例えば序盤にスタッフがアニメ誌で「悪役でもイイ人にしたい。死んだら視聴者が涙するみたいな」みたいに言っていたマシュマー・セロの副官ゴットン・ゴーは卑怯な策略を使ったあげくに自業自得の死に様をむかえます。


 中盤から序盤の明るく楽しい作風は影を潜め、主人公ジュド-の妹リィナは死亡し(たと思われ)、それが原因で味方になった強化人間エルピー・プルも戦死。


 その一方で、初代『ガンダム』ではオーストラリア大陸を壊滅状態に追い込んだコロニー落としは、ダブリンにコロニーが落ちたにもかかわらず被害が非常に少ないという描写のブレを起こしております。ただ、コロニー落としの被害については、二次創作で盛られたものが、のちのOVA『ガンダム0083』で公式化したので、この『ZZ』の時点ではそれほど強力ではなかったという考え方もあります。ただ、それでも『ガンダム』の序盤で各話冒頭に出てきたコロニー落としの映像に比べると被害が少なそうに見えるのは事実です。


 とまあ、いろいろとブレブレな感じがするのが、ガンダムシリーズ第三作の『ZZ』なのです。


 ただ、そのブレブレの象徴として、やり玉に挙げられることがある主役ロボのZZガンダムについては、実は私はそんなに嫌いではありません。


 『月刊OUT』の読者投稿ページで、ZZの人形を持った海原雄山が「こんなものはMSではない!」と叫んでいるイラストを見かけて大笑いしたことがあるのですが、確かにリアルロボとして考えるとZZというのはナシだと思います。


 しかし、前にも書いたように初代ガンダムというのは、意外にスーパーロボの尾を引きずっていたんです。無敵の超合金装甲と必殺の破壊力、そしてサポートメカとの合体。


 そう考えると、ビームコートシールドで敵MSのビームライフルを跳ね返し、必殺のハイメガキャノンを額からぶっ放し、「ZZ」と刻印されたレバーでコア・ファイターを中心に変形合体するZZというのは、正しく「無敵のスーパーロボット」であるガンダムの後継機なんですよ。


 この「ZZ」の変形合体レバーについては「こういうのが必要なんだよ!」と富野監督が激賞していたというのを、当時のアニメ誌でデザイナーが語っていました。このあたり、富野監督もかなり意識してスーパーロボへの回帰を考えていたんじゃないかなと思ったりしました。


 それでいて、名前からしてZガンダムの後継機でもあり、胸元あたりのデザインとかにZガンダムらしさも漂っていたりします。


 その後のガンダム系列のデザインの流れからすると、全体的に太目で重MSという感じのZZというのは、細身なデザインが多いガンダムシリーズの主役機の中では異端児扱いされている感があるのですが、実は「コア・ファイター」が中心になった合体システムを持っているガンダムというのは、このあと結構出てきます。


 そして、そういうコア・ファイターシステムを採用しているガンダムのうち、純粋に初代と同じくAパーツ、Bパーツと変形するコア・ブロックというシステムを採用しているのは『0083』のGP01ゼフィランサスぐらいだったりします。VガンダムやV2ガンダムも、『ガンダムSeed Destiny』のインパルスガンダムも、基本的には、コア・ファイター以外のパーツも飛行可能な飛行機ユニットとして存在しています。


 この、コア・ファイター以外のパーツも飛行機ユニットというのは、ZZが初めて採用した形式なんですね。ZZのように全合体で飛行形態になるというのは珍しいのですが、個々のパーツだけでも飛行可能というのはZZが初で、その後のコア・ファイター系ガンダムの基本になっているんです。


 イロモノ扱いされることが多いZZですが、ガンダムシリーズの歴史の中では、やはり切っても切れない存在だと言えるのではないでしょうか。


 さて、ZZについては、味方MSはほぼZガンダムからの流用なので語ることは少ないので、次回からはジオン系MSについて語っていきましょう。


 そして、ZZといったら、これで締めるしかないかなと。


「ニュータイプの修羅場が見れるぞ!」(爆)

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