第128話 蒼き流星SPTレイズナー その3 僕の名はエイジ、地球は狙われている!編

 レイズナー語りも3回目ですが、キャラや斬新だったことなどについて語って終わりにしたいと思います。なので、サブタイトルは第1話のエイジのセリフからいただきました。これ、オープニングの間に挟まってたんで、すごく印象に残ってるセリフなんですよね。


 さて、そのエイジですが、地球人の父と侵略者であるグラドス星人の母の間に生まれた混血児ハーフです。父親が作った最強SPTレイズナーを奪って脱走し、地球に侵略の危機を知らせに来ました……って、こう書くと、めっさスーパー系主人公っぽい設定なんですが(笑)。あ、前に父親のロボで戦う主人公っていなくなったって書きましたが、こいつ父親のロボで戦ってましたね(爆)。


 性格は温和で、人殺しを嫌う甘ちゃんでした……が、二クール終了時に行方不明になり、それから作中で三年が経過したあとの三クール目ではトンファーとかを使って敵を容赦なく叩きのめす性格に変わっていました(笑)。まあ、殺しを嫌うという部分は不変でしたけど。マーグみたいに精神を患ったふりをして物乞いの真似事もしてたなあ。


 甘ちゃんっぽさが少し鼻につきましたが、アムロとか一条輝みたいな「それまでの類型とは異なる主人公」ではなく、ごくフツーのヒーローでしたね。


 ヒロインのアンナは戦闘能力は無く、主人公エイジの心の支えになる系のヒロインですね。ぶっちゃけ、あんまり印象が残ってないという。私の好みが「戦うヒロイン」なもんで、こういうタイプはそんなに好きではないというのが大きいかと。


 類型的味方ライバルのデビッド、最初はエイジに惹かれているけど最終的にはデビッドとくっつく戦う系サブヒロインのシモーヌ、参謀系味方キャラで三クール目では敵側に寝返ったフリをしていたロアン、最年長なのに人が良いことだけが取り柄の情けない系キャラ兼コメディリリーフのアーサーと、味方キャラも類型的に一通りそろっていました。あ、エリザベス先生ってお姉様系キャラもいたなあ。


 しかし、レイズナーに限ったことではないのですが、むしろ敵キャラの方が印象に残ったりするんですよね。最初のライバルキャラは、前にも書いたゲイル先輩。有能かつ強いパイロットで、人格的にも大人。エイジにとっては姉の婚約者であり、自身も兄のように慕っていたという。ゲイル自身もエイジを気にかけており、何とか連れ戻したいと努力していたのですが、最終的には暴走したレイズナーのV-MAXによって戦死します。この人が乗ってたグライムカイザルは、ライバル系リアルロボとしては結構良いデザインで好きでした。


 そのゲイル先輩の仇としてエイジを付け狙うのが彼の婚約者だったジュリア。つまりエイジの実の姉です。赤と白に塗られたブラッディカイザルというグライムカイザルの同型機を駆ってエイジを追い詰めるものの最終的には敗北。三クール目では弟に影響されたのか非暴力主義の抵抗運動を率いて「クスコの聖女」なんて呼ばれていました。なお、そのときに公衆の面前で裸に剥かれるなんてシーンがあったり(爆)。


 しかし、やっぱり印象的なのはゴステロ大尉でしょう。殺人狂で「俺は人殺しが大好きなんだ」とか公言しちゃうようなキャラです。ジュリアに横恋慕してゲイルを逆恨みしたりとか性格の悪さは折り紙付き。当然、やり口も卑怯だったりします。前半部で戦死したかと思われていたのですが、三クール目でサイボーグになって復活。その際には「脳が痛え」とか言いだす、更にエキセントリックなキャラになっていました。もっとも、再登場のあとは「死鬼隊しきたい」というゴステロと大差無い狂ったサイボーグばっかり集めた部隊に所属しており、周りも変なのばっかりでしたが(笑)。声優は広瀬正志。ガンダムでは渋くてカッコ良いランバ・ラルを演じていたのに、高橋監督作品だと裏切者デスタン、卑怯者カン・ユーに続いて、殺人狂ゴステロと極悪度がどんどんレベルアップするヘイト集めキャラを演じております。


 そして、三クール目から登場なものの、忘れちゃいけないのが正当派美形悪役ライバルであるル・カイン。グラドスの地球侵攻軍の司令官であるグレスコの実の息子です。黄金色の専用SPTザカールを駆って一度はエイジとレイズナーをボロボロにします。このザカールが、レイズナーより強力な赤色のV-MAXを使えるんですね。デザイン的にもレイズナーと同じようなヒーロー系の造形で、ライバル機としての風格充分でした。


 ところで、キャラ造形的に特徴的なのが、二クール目と三クール目の間に三年間の時間経過があるということです。このため三クール登場のル・カインや前半で退場するゲイル先輩以外は性格や外見などがだいぶ変わっています。特に、三クール目の外見は、当時大人気だった『北斗の拳』の影響が非常に強く出ており、このあたり好みが分かれるところです。私はゲラゲラ笑って受け入れてましたけど(笑)。なお、その直後に今度は『北斗の拳』でもラオウ打倒後に数年ほど作中時間が飛んだ(アニメでは『北斗の拳Ⅱ』に移行)ため、アニメ誌の読者投稿ページで「今度は北斗がレイズナー」なんて書かれていました(爆)。


 さて、このレイズナーのストーリー上の仕掛けとして、侵略者であるグラドス星人と地球人は実は同じ人種であるという「グラドス創世の秘密」があります。かつてグラドス星に文明を築いた原グラドス星人が、自分たちの種としての衰えを自覚し、地球人をグラドス星に連れてきて自分たちの文明の後継者にしたというのです。


 これ、別に斬新な設定でも何でもありません。既に1983年の『宇宙戦艦ヤマト完結編』のディンギル星人で同じような設定がされていました。また、前に書いたようにバルディオスでもS-1星人が実は地球人の末裔というのが劇場版で明かされています。


 レイズナーでは、この「秘密」を知っていたグレスコ司令と、知らなかったル・カインがそのために仲違いして、秘密を知ったル・カインが錯乱して父親であるグレスコ司令を射殺してしまうなどという事態も起きています。また、この秘密を知ったためにグラドス至上主義者だったル・カインが変節してロアンに権力を移譲したものの、そのせいでロアンに裏切られて地球人の逆襲を許してしまったりしました。


 最終的には、原グラドス星人が地球のクスコの地に残していた「グラドスの封印」という装置をジュリアが起動して、地球とグラドスの間の恒星間航行ができなくなるようにするという形で物語は終結します。ただ、このあたりTV版では描き切れず、OVA版で補完されています。


 打ち切りの影響で、レイズナー敗北から、より強化された新型レイズナーへのパワーアップとか、地球人ゲリラが戦力を整えてグラドス地球制圧軍に反抗するとか、そのあたりの流れが全部ぶっ飛ばされてしまったので、最終回あたりはアニメ誌で情報を補完していないとサッパリわけがわからないという有様になっています。このあたり、その1のときにも書いたように、それまでのストーリーなどが面白かったので、非常に残念な作品だと言えると思います。


 なお、主題歌「メロスのように」は非常に名曲です。一応冒頭に「蒼い流星」という言葉も入っていますし。なお、本作はオープニングのサビの部分に入る直前に音楽が止まり、その回の名シーンがカットイン的に挿入されるという斬新な演出が行われていました。その第1話のシーンが「僕の名はエイジ、地球は狙われている!」だったんですね。


 打ち切りという残念な結果に終わったにもかかわらず「名作」と評価されることが多い作品なので、TVで四クールきっちり作られていたらと思うと、非常にもったいない作品だと思えるのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る