第113話 超獣機神ダンクーガ (1985年)

 やぁってやるぜ! ということで今回は『超獣機神ダンクーガ』です。


 こいつはスーパーロボットとして、かなりメジャーです。これはもうスーパーファミコン版『第四次』という比較的初期からスパロボに参戦しているというのが大きいでしょう。しかしながら、実はリアルタイム当時は四クール全五十二話予定が三クール全三十八話に縮められた打ち切り作品でした。


 ただ、その後OVA版がいくつか作られており、TV本編では打ち切りで描かれなかった敵ラスボスとの最終決戦が描かれたりしています。


 私は、TV本編の前半部をリアルタイムで見ていました。ただ、OVA版は見ていません。あとはスパロボでの印象がメインになります。


 こいつは、由緒正しきスーパーロボの系譜を受け継いでいます。四機合体というのは多少変則的なのですが、分離前の各機(獣戦機じゅうせんきと呼びます)がマシン形態→野獣形態→ロボ形態と三段変形(イーグルファイターのみマシン形態→ロボ形態のみの二段変形)して、さらに合体するという結構豪華な構成だったりします。


 ただ、その代償として合体システムはかなりシンプルです。胴体部を構成するビッグモスが機体の大半を占めており、それにイーグルファイターが頭部に接続、ランドライガーとランドクーガーが両脚にセットされるという形になっています。このためリアルタイム当時から「兜かぶって下駄はいて」と揶揄やゆされていました(笑)。


 そのせいで、玩具のプロポーションがかなり悪かったんですね。頭でっかち、足でっかちで。各機の変形ギミック自体は再現されていたんですが、最終ロボ形態がカッコ悪かったんですよ。私は既に玩具を欲しがる年齢ではなかったのですが、弟もこれは欲しがりませんでしたね。後年の超合金魂版になって、ようやくプロポーションとギミックが両立するようになったという。


 また、完全にスーパーロボの系譜に入る作品なのですが、TV放送当時は必殺武器を持っていませんでした。これ、スパロボから入った人がTV本編見て驚くところだと思うのですが、スパロボだと必殺武器の「断空剣だんくうけん」とか「断空砲だんくうほう」って、OVA版からの登場だったりするんですね。このあたり、実は結構リアルロボの風味が入っていたりします。


 前に制作会社が同じ葦プロのドルバックについて語ったときに「リアルロボの皮をかぶったダメなスーパーロボ」と評したことがあったのですが、本作はその反省からか「リアルロボの風味をまぶした立派なスーパーロボ」として描かれています。


 リアルロボ全盛の時代なので、風味としてはリアルロボの要素が入っています。主人公の藤原ふじわらしのぶ以下、パイロットは全員軍人だったりします。また、パイロットスーツも軍服風で、スーパー系というよりはリアル系に近かったりします。


 そして、合体前の各獣戦機や武装も基本的には軍用兵器で、弾切れだのエネルギー切れだのを起こしたりするので、補給が重要だったりします。


 その一方で、獣戦機には「ビーストモード」が搭載されており、野獣形態に変形することで破壊的なパワーを発揮します。主人公である忍の乗機イーグルファイターのみは野獣形態に変形しないのですが、「やぁってやるぜ!」の掛け声と共に機体全体が炎のようなエネルギーに包まれて敵機に体当たり攻撃をかけられるようになります。合体前の機体が「科学忍法火の鳥」とか「ゴッドバード」的な必殺技を持ってる扱いなんですね。


 このあたりの「スーパーロボ」的なギミック、ケレン味がきちんと機能しているところが、ドルバックと違うところなんですね。


 ただ、TV版本編では、最終形態のダンクーガに合体することで既にスーパーパワーを得てしまっているので、それ以上の必殺武器や必殺技が無かったんですね。ダンクーガへの合体自体が必殺技みたいなものだったので。


 そのあたり、演出的にはゴッドマーズと似ているのかなと思います。まあ、こいつについても、ゴッドマーズと同じく「線が多くて動かせなかった説」もあったりするのですが(笑)。


 その必殺武器が無いという部分はOVA版で補われ、スパロボ登場時には押しも押されもせぬ立派なスーパーロボになったというわけです。


 ただ、こいつについては、巨大ロボットアニメとして見た場合、最終ロボ形態の登場がやたらと遅いというのは常に指摘されることではあるんですよね。


 何しろダンクーガへの初合体が第16話! ダンガードAの第12話をぶち抜いて主役ロボット登場のタイミングとしては一番遅くなります。タイトル主役ロボの登場回が遅いというとZガンダムの第21話という例はありますが、これは完全に二号主役ロボ扱いですからノーカンでしょう。


 もちろん、忍の搭乗機であるイーグルファイターは第1話から登場して、前述の「やぁってやるぜ!」を披露しているんですよ。それ以降も、各話ごとに獣戦機が一機ずつ登場してビーストモードを披露したり、ロボ形態に変形して戦ったりしています。


 ですので、ロボ的な魅力が無いわけではないのですよ。むしろ、普通のスーパーロボだと合体前の形態は刺身のつま扱いされることが多いのに、本作ではそれらをきちんと描いているという。


 ただ、子供に玩具を売るという戦略の上では、果たしてそれが正しかったのかというと微妙なんですよねえ。そのあたりが、結局全三十八話打ち切りという残念な結果につながってしまったのかなとは思えます。


 そして、私自身で言うと、本作は途中でフェードアウトしてしまったんですね。Zガンダムのように明確に「つまらないから切った」という印象は無いんです。ただ「何となく」見なくなってしまった。前半部は面白かった記憶があるので、中盤の中だるみの時期に何となく一週見逃したせいで、そのままずるずると見なくなっていった可能性が高いんじゃないかと思います。


 なので、ダンクーガへの合体のあたりまでは見てた記憶があり、ダンクーガへの初合体とかは印象に残っているのですが、終盤の長官戦死だとか、基地が破壊されて代わりに竜型戦艦ガンドールが母艦として出てくるとか、そのあたりの展開は見てないんですよ。


 ただ、ライバルキャラだったシャピロ・キーツの死に様だけはおぼえているので、そこは飛び飛びで見てたんでしょう。


 こいつ、地球人類だったのに、第1話で異次元からの侵略者ムゲ・ゾルバドス帝国に寝返って、敵の幹部になったりするんですね。しかも、ヒロインである結城ゆうき沙羅さらとは恋人関係だったという。第1話でも一緒に敵に寝返ろうと誘われたりしています。まあ、最終的にはムゲ・ゾルバドス帝国にも見捨てられて錯乱したところを、その沙羅によってトドメを刺されるんですが。


 そのムゲ・ゾルバドス帝国なんですが、普通に怪物的な容貌の侵略者だったりします。古式ゆかしい侵略者です。


 ただ、ムゲ帝王は単なる悪のボスという感じではなく、結構温情があるタイプなんですよね。最初の侵略責任者であるデスガイヤー将軍が失敗続きだったのに対して、普通の悪ボスなら「処刑」とか「責任を取れ」とか言いそうなのに、前線からの更迭だけで済ませた上に、地球侵略前の戦いで一緒に戦っていた頃の思い出とかを語ったりして、しっかりフォローしているという。力による支配者ではなく、人格的な魅力とかカリスマ性もきちんと兼ね備えている感じの帝王でした。


 さて、最後に本作について絶対に外せない要素について語りましょう。タイアップ主題歌です。マクロス以降出てきたアイドル歌手とのタイアップ。じつは巨大ロボットアニメに限らず、この頃のアニメではそこそこ見られる現象だったりします。


 例えば、有名歌手に主題歌を歌わせたというと「少年ジャンプ」系の『キャッツアイ』が元祖でしょう。ただ、ジャンプ系の場合、有名歌手に歌わせても「主題歌」として作品自体との内容的マッチングはきちんとなされていたんですよ。『キャッツアイ』しかり、『北斗の拳』の「愛をとりもどせ!!」しかり。どちらも、きちんと作品の主題歌として成立していたという。


 それに対して、本作の前期オープニング「愛よファラウェイ」は、『月刊OUT』で「イメージソングではなくダメージソング」と評されるほど、作品イメージに合っていなかったという(笑)。


 そのせいか、私が遊んでいたころのスパロボでは、一貫して前期エンディング「バーニング・ラヴ」が使われていました。その後「愛よファラウェイ」も使われるようになったとスパロボWikiには書いてありましたが、その頃は遊んでいません。


 後期オープニングや後期エンディングは、見てなかったせいかまったく印象に残ってないのですが、Wiki読んで見たら第34話以降のたった五話しか使われてなかったのね。そりゃ記憶に残るはずもなし。


 歌っていた藤原理恵は、本作でもローラ・サリバン役で声優として参加しているのですが、ぶっちゃけ下手でした(笑)。その後CCガールズの一員となってメジャーになっており、スパロボでもそれがネタになってたなあ。


 というわけで、序盤の印象が強く残っている作品でした。リアルタイム当時は打ち切りをくらったとはいえ、のちの評価からしても名作と呼ばれるのに不足はない作品かと思います。


 さて、次回はガンダムとは別の意味で巨大ロボットアニメを変えたエポックメイキング作『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー』行ってみましょう!

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