第111話 メガゾーン23 (1985年)

 さて、長かった(笑)Zガンダムが終わって通常のロボ語りに戻った途端に、いきなり新機軸、初のオリジナルビデオアニメ『メガゾーン23ツースリー』です。


 発売は3月9日と、わずかにZガンダムの放送開始よりあとになります。3月23日には単館上映とはいえ劇場公開もされています。実は、単に巨大ロボが出てくるだけなら、OVA『幻夢戦記レダ』も同年3月1日発売とわずかに先行しているのですが、こちらは菊池秀行の手になるノベライズ版は読んだことがあるものの、アニメ本編は未見のため当エッセイでは扱いません。


 ならば、本作の方は見たことがあるのかというと、はるか後年になってCS放送で見ました。リアルタイム当時は『レダ』と同じくノベライズ版(今回Wikiで調べたら監督の石黒昇が執筆していました)を読んだのと、当時はよくあったフィルムコミックを読んだことがあるくらいでした。ただ、アニメ誌では大きく特集されていたので、設定などは知っていました。


 それでも『レダ』の方は「レダの鎧」という巨大ロボが「出てくるだけ」程度の扱いなので巨大ロボットアニメに含めてよいのか微妙なのに対して、本作の方は一応ロボ売りのひとつということで、巨大ロボットアニメの範疇に含めてよいかと思います。


 本作の主人公ロボ「ガーランド」はバイク変形ロボです。いままでのバクシンガーはタイヤが余り、モスピーダはパワードスーツ扱いでバイク単体では変形が成り立たなかったのに対して、ガーランドはバイク単体で完全変形します。ただ、元がバイクであって、シンクロン原理(笑)とかも使っていないので、身長四メートル未満と巨大ロボとしては小型になります。ボトムズのスコープドッグと並んで、最小の部類でしょう。


 ただ、今回Wiki読んでみたら、中味が「がらんどう」だから「ガーランド」って酷いネーミングの由来が書かれていました(笑)。そら、この小ささで人が乗り込むんだったら、がらんどうにせざるを得ないよなあ(笑)。もっとも、注によるとメカニックデザインで参加していた漫画家の宮尾岳(『並木橋通りアオバ自転車店』は名作ですよ!)はツイッター上でこの説を否定しているそうです。


 とはいえ、デザインは非常にカッコ良く、赤と白を基調としたカラーリングもスタイリッシュでした。


 ライバルロボは「ハーガン」。こちらもバイク変形ですが、ガーランドと違って単体では変形できないという仕様でした。宇宙空間用の「ゼロゼロハーガン」(気圧ゼロ、重力ゼロ対応)というバリエーションがあったのをおぼえていたんですが、Wikiによると、これは続編『メガゾーン23 PARTⅡ』に登場していたようです。


 こいつらが戦うので、立派な巨大ロボットアニメではあります。先にも書いたように、それが売りのであることは間違いないでしょう。


 ただ、作品全体の売りで考えると、取り上げることは別にあるんですねえ。


 メインスタッフが『マクロス』と同じなので、それを売りにしたかったのか、本作でも「時祭ときまつりイブ」というアイドル歌手が出てきます。現役アイドル歌手を声優に起用してタイアップというのは、マクロスとかと同じで、この頃何度か使われた手ですね。


 この時祭イブが、非常に時代を先取りしていたんですよ。彼女は、実は実体の無いバーチャルアイドルだったという。ライブをやっておらず、テレビの中でしか存在しないんですね。


 本作発売当時は、まだ「バーチャルリアリティ」なんて言葉はありませんでした。コンピュータグラフィックスは、まだ非常につたないレベルです。バーチャルアイドルという設定は、SF的なギミックとしては感心したものの、現実味なんてのは全然ありませんでした。


 ところが、三十三年を経過した2018年になってみれば、「初音ミク」なんてバーチャルアイドルが人気者になっていたり、現実の人間と見まごうばかりのCGキャラがポスターの中でブランドもののバッグの宣伝をしてたりするのですよ。


 つくづく、時の流れや技術の進歩というものを感じてしまいましたね。


 そして、もうひとつ大きなギミックとしては、作品タイトルである「メガゾーン23」というのは、実は巨大な世代宇宙船の名前だったというのがあります。作品の舞台は、最初は近未来(80年代から90年代)の東京のように描かれていたのですが、本当はそれから五百年以上未来の話だったという。宇宙船の中の都市を二十世紀末の東京に偽装していたんですね。


 何でそんなことをしたのかというと、二十世紀末、1980年代の東京が一番平和で幸せな時代だったからという。二十一世紀になってみると、なかなか頷けるものがあります(笑)。確かに、ちょうど日本が一番輝いていた時期だったりするんですよね。


 実は地球は戦争の影響で環境が破壊されてしまい、それを数百年単位で再生している最中だったという。その間、人類は世代宇宙船で生活し、地球から離れていないといけなかったんですね。メガゾーン23の「23」は東京23区の意味を含ませているんですが、設定的には二十三番目の世代宇宙船ということで、ほかにも世代宇宙船はたくさんあります。


 それが、ちょうど地球に戻る時期が近づいてきていて、離れていた世代宇宙船同士が地球に近づくことによって互いに接近してきたところで、ほかの世代宇宙船から侵略の動きがあるというので、防衛のために作られたのがハーガンやガーランドだったという。


 ところが、作中の描写で見てみると、全然侵略者には対抗できてなかったりします(笑)。日本の平和ボケを暗喩してたりするんでしょうか。


 さて、バーチャルアイドル時祭イブというのは、実はメガゾーン23の管理コンピュータ「バハムート」の管理プログラムのひとつだったりするのですね。


 メガゾーン23は、大部分がバハムートの管理下に置かれていて、戦争とかしないように監視されていたんです。それが、侵略への危機感を抱いた軍の一部がバハムートの管理下に無い一部の領域でハーガンやガーランドみたいな軍備を増強していて、やがて一部若手将校が中心になってクーデターを起こします。それでバハムートが軍の管理下に置かれて戦争への動きが進んで行くという。


 その動きをイブの願いで阻止しようとガーランドで戦うことにした主人公矢作やはぎ省吾しょうごは、結局はライバルであるB・Dの駆るハーガンに敗れてボロボロにされ、命だけは助けられるものの、すべてを失ってしまった……という衝撃のエンディングで本作は終わります。


 ……何てこった、時間切れだよ。これ、続いちゃうのかい!?(爆)

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