第53話 太陽の牙ダグラム(1981-83年)
さて、今回は名作揃いの81年巨大ロボットアニメでも最大のヒット作にして「元祖リアルロボットアニメ」のダグラムです。これについては、リアルタイム当時は見ていませんでした。だって裏番組のゴッドマーズ見てたんだもん(笑)。大人になってCS放送で全話視聴しています。だから、大人になって見た印象以外では、当時の二次資料が主な情報源です。タカラ系なんでスパロボにも参戦していませんし。タカラ系のスパロボみたいなゲームもありましたけど、あれはやってないからなあ。
さて「リアルロボットアニメの元祖」というとガンダムと思われるかもしれませんが、前にも書きましたように、あれはスーパーロボットをかなり引きずっていました。「なろう」の方の感想でsugi様が「始祖鳥」に例えられたのは非常に的を射ていたかと思います。
そういう意味で、本当に「リアルロボットアニメ」として作られたのは、このダグラムが初でしょう。また、この「ダグラム」というフォロワーがサンライズの巨大ロボットアニメでも一番のヒット作(最長不倒の一年半6クール全75話)になったことが、「リアルロボットアニメ」というジャンルが、それまでの巨大ロボットアニメから分離独立するきっかけになったのではないかと思われます。
また、これ以降『ボトムズ』『ガリアン』『レイズナー』と立て続けにヒット作や悲運の名作を作り出す高橋良輔監督の巨大ロボットアニメ初監督作品でもあります。
ところが、不思議なことにリアルタイム当時のヒットに比べて、後年の派生作や二次創作的な部分での盛り上がりが非常に少ないという作品でもあります。同時代に劇場版は作られているものの、ほぼそれだけ。
ガンダムがMSVなどが作られたほか、OVAなどの派生作が多いのは、まあ人気度から考えても不思議ではないでしょう。
しかし、同じ高橋良輔監督の次作『ボトムズ』の方が、OVAなどの派生作には恵まれていたりするんですね。こっちは4クール全52話と普通に終わっているのに。もっとも、二作目だけあってキャラの立ち方などはボトムズの方が上ではあるのですが。
プラモなどでも、最近は少しリメイク版や復刻版が増えてきましたが、数年前まではリメイクなどが少ない作品だったんですよ。
もっとも、実際に全話見てみると、その原因はストーリー面にあるのかなと思ったりはするのですが。
徹底したリアル志向。それは諸刃の剣でもありました。地道に、真面目にデロイアという植民惑星による宗主国地球に対する独立戦争とゲリラ戦を描き、最終的には政治決着してしまうという。その政治決着において、主人公たちは完全に駒です。この決戦さえ乗り越えれば独立を勝ち取れるという戦いに完全勝利できず、実際には表面上は「独立を認める」とされながら、裏では実際の利権は宗主国である地球側に握られたままというすっきりしない決着。
もっとも、Wiki読んでると最後はラスボス格の急死に乗じて独立の実質を取り戻すって書いてあるんですが、TV版の最終回見た感じだとそんな風には見えませんでした。これ劇場版で補完されてるのかな? 劇場版は未見なのでわかりません。
また、主人公クリン・カシムは、地球側の指導者であるドナン・カシムの息子という設定で、言うなれば敵国の王子(笑)。そこだけ取ったらボルテスかよって感じなんですが、これが設定的に生かされてるのは序盤のみという。
ドナンの秘書であるラコックというのがライバル格として出てくるのですが、こいつが徹底的に政治家(笑)。ドナンが病に倒れる中で上手く立ち回って実権を握って、いろいろ陰謀を企んで最終的には地球側の陰のフィクサーにまで上り詰め、事実上のラスボス格になってしまうという。
ところが、こいつがクリンのことをライバル視したり、ヒロインのデイジーに横恋慕したりというような感じだったのは序盤のみ。中盤以降は完全に自分の野望のために突っ走っており、クリンなんかアウトオブ眼中という有様(笑)。
逆にクリンの方は完全に「ゲリラの一戦士」におさまってしまい、独立闘争の象徴ダグラムのパイロットとはいうものの、それ以上のポジションには徹頭徹尾ならないという状況。
ラコックと対置されるのはクリンではなく独立運動側の政治指導者サマリン博士という形になり、終盤の政治ドラマの主人公はむしろラコックなんじゃないかという有様になってしまっているんですね。
リアルタイム当時からアニメ誌等で「ロボットがいらない」と言われてしまったストーリーは、確かに巨大ロボットアニメとしてどうよ? という感じではありました。
ただ、これってロボのプラモや玩具が売れてたから、無理矢理放送を引き延ばしたせいじゃないかなあとか思ったりもしました。
なお、第1話でダグラムは登場して戦っているものの、そのあとすぐに過去の話に戻って実際にダグラムが活躍するのは第9話以降になります。この第1話が大問題で、先にダグラムを活躍させようとしたのは正解だと思うのですが、あとの方のストーリー展開と矛盾しているので、どこにも組み込めないという(笑)。パイロットフィルムみたいな存在になってしまっているんですね。
あと、キャラクターもリアル志向でした。何と言っても、メインヒロインのデイジーに頬骨が描かれているという(笑)。また、ゲリラの女戦士キャナリーも決して美人ではなく、一番可愛く描かれていたのが中盤テコ入れで登場したリタという(笑)。しかも、このリタがデスタンという作中での最低野郎に惚れていて、そいつに殺されてしまうという始末。
そのデスタンというのが、最低野郎なんですが非常に味のあるキャラでして、元は硬派な独立の志士だったのですが、地球側につかまって命惜しさに地球側のスパイに転向し、それ以降は卑怯街道まっしぐらという。ところが、最後の最後になって、利用されていた相手のラスボス格ラコックを逆恨みで撃ち殺すという重要な役を果たしていたり(笑)。中の人が
とまあ、ストーリー面だとかキャラデザにおいてはスッキリしない(笑)面も多くあったりはするのですが、それを補って余り有るほど、コンバットアーマー(以下CBと略)と呼ばれるロボがカッコ良かった! なお、Wikiによると略称は「CBアーマー」もしくは「CA」だそうなんですが、私の記憶だとリアルタイム時の略称は「CB」のみだった気がするんですよね。
何しろ、リアルタイム当時はまったく見ていなかった私ですら、カッコ良いと思ってましたから。
現用兵器のヘリを思わせるキャノピーコクピットが頭部になっていて、左右ツインローターのヘリで空輸されたりしてます。これが敵CB でも戦闘シーンのBGM(デレンデレンデレンデレンって感じの)にのって空輸されてるシーンはメチャクチャカッコ良いんだ!
全身の装甲を取り外して防水布みたいなのかぶせてる改造機とか、機関銃座を機体横に増設したバリエーション機とか、ガンダムだとMSVで登場するような機体が最初からオフィシャルに作中で登場していましたし。
あと、序盤の敵雑魚CBが「ソルティック」って呼ばれてるんですが、これがメーカー名だったり。実際の機種名は「ラウンドフェーサー」なのに「ソルティック社製」なので「ソルティック」と呼ばれる。これ、大戦中の戦闘機が「ワイルドキャット」とか「ヘルキャット」という機種名じゃなくて「グラマン」とか呼ばれてたのを既に戦記とか読んで知ってたんで、リアルタイムの頃に二次資料でそのことを知ったときから「カッコ良いなあ」と思ってました。
それと、デザイン的には口元のパイプや排気口とか、、キャノピーが丸いところとか、完全にザクを意識してます。もっともデザイナーは同じ大河原邦男なんですから、発注側(高橋監督?)が「ザクっぽく」って要望したのかなとか思ったり(笑)。
また、実際に見てみたら、主人公クリンがダグラムに乗る前にソルティックに乗って戦ってたりするんですよ。これはこれは巨大ロボットアニメ的には非常に珍しいシーンだと思います。なので、自作でも敵量産ロボに主人公を乗せて戦わせるという形で思いっ切りパクりました(笑)。
それから、CBの中には人型でないのもあって、特に序盤に出てくる「旧式機」クラブガンナーは、四本脚の戦車という形をしており、その特徴的な形はダグラムを見てなくても知ってる人は多いのではないかと思います。あれも、よく考えると車高が高くなるだけで、四つ足にしたところで普通の戦車に比べて荒地走行能力がそれほど高くなるとも思えないので、実のところそんなにリアルでもないのですが、リアルタイム当時は何だかリアリティのあるデザインに思えたのですよ(笑)。
とまあ、ロボ的には非常にカッコ良く、そのためかプラモも大売れしたほか、リアル系に寄って、内部機構に装甲板を装着するという形の「デュアルモデル」という玩具も大ヒットしました。見てなくても欲しかったですから、あれ。
そうそう、プラモのスケールも、ガンダムの1/144とかは国際スケールとはいっても戦闘機の一部とかにしか使われてないサイズだったのに対して、ダグラムの1/72とか1/48は戦車とかで多く使われてるスケールで、そういう面でもリアリティがあったなあ。見てないんで買ってなかったけど(笑)。
ただ、実際に作品を見てみたら、ダグラムってリアルロボだけど活躍面でいえばスーパー系に近い無敵ロボだったりするんですよね(笑)。クリンの能力が高いのもあるのかもしれませんが、作中であまりピンチになってるシーンがなかったという。
なお、ダグラム自体は量産前提で作られていたものの、工場が地球側の攻撃で破壊されると同時に機密保持のため設計図が破棄されたので最初に作られていた一機のみになってしまったという設定でワンオフ機になっています。
冒頭に朽ち果てた姿で出てきたんで、最後には敗れて破壊されるのかなと思ってたら、結局最後に不本意な形で政治利用されるのを嫌って自分たちで焼き捨てたという。
これも、本当は違うエンディングを考えていたのに、延長によって色々とストーリーが変わっていったんじゃないかな、とか邪推してます。もっとも、第1話がわずか十数話の間に組み込めなくなる程度にストーリーラインが変わってたりするんで、初期設定の段階では結構見切り発車してた可能性もありますが(笑)。
そんなわけで、巨大ロボットアニメとして同時代と後世に与えた影響は非常に大きい名作だと思います……私自身はゴッドマーズ派だったけどな!(笑)
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