第30話 機動戦士ガンダム その10 ホワイトベースが沈む編

 ガンダム語りもなんと10回目! 今回は宇宙艦艇についてです。今回のサブタイは、記憶に残っている初回放送の一番印象的なシーンにおけるハヤトのセリフからいただきました。


 ホワイトベースのデザインの怪しさについては、今更語るまでもないかと思います。ダイターンで使う予定だったものの流用だそうで。あんなに出っ張りだの何だのがあって、小さな主翼で空が飛べるわけない。その上、大気圏突入とかまでします。そうした矛盾を全部「ミノフスキークラフト」という後付設定で誤魔化してる。


 ジオン軍からは「木馬」のコードネームというか徒名あだなで呼ばれていました。むしろスフィンクスっぽい気がしますし、実際大河原邦男はその意図でデザインしたという発言をしてるそうです。


 主武装のメガ粒子砲にしたところで、敵のムサイや味方のマゼランなど、普通に砲塔式のが多い中で、短砲身でガイドがついた横並列のやつと、同じく短砲身だけど少し長くて縦に並んでるやつの二種類があり、ジャブローで交換しています。


 ほかに主砲がありますが、これがなんと火薬式だったりします。口径五十二センチと初期の二次資料にはあったのですが、のちに五十八センチ説と八十八センチ説が出てきます。戦艦大和(本物)の四十六センチ砲を上回り史上最大級の艦載砲という扱いですが、史上最大の火砲という表現だとドイツの列車砲ドーラの八十センチに負けるので、八十八センチに拡大したのかなとか思ったり(笑)……ってググってみたら口径九十一センチ強の迫撃砲なんてのもあるのね……。


 あとは対空近接防御用の機関砲とかですね。これがあらかた人力という恐ろしさ(笑)。素人が砲座に座って戦っていたという。そりゃブライトさんだって「弾幕薄いぞ! 何やってんの!!」とか叫びたくなるわな(笑)。


 印象としては、とにかく頑丈(笑)。いや、機関不調とかはありましたし、敵からの攻撃も食らってはいましたが、致命傷はくらわず生き残り続けたという。宇宙戦艦の方のヤマトと一緒ですね。だからなのか、初見のときでもア・バオア・クーで沈んだときが非常に印象に残っています。


 こいつ、後付設定だと最初は強襲揚陸艦って設定だったのが、宇宙空母になったり、強襲重巡扱いされたりと、結構設定が変遷しています。今は強襲揚陸艦に戻ってるのかな? 作中では「最新鋭戦艦」って呼ばれてるけど、これは艦種というよりは「戦闘艦」って意味で使われてるんだろうし。


 母艦という意味ではザンボット3のキングビアルという先行例がありますが、あれは扱いとしては移動要塞ですね。富野監督のロボットアニメだと、基本的に船に乗って各地を放浪というパターンが多く、イデオンのソロシップ、ザブングルのアイアンギアー、ダンバインのゼラーナなど基本はホワイトベースと同じく母艦に乗ってあちこち移動するのが物語の基本パターンになります。ガンダム系でも同じで、『0080』『Gガンダム』『第08MS小隊』などのような例外はあるものの、富野監督以外のガンダムでも大抵は母艦で各地を移動するストーリーになります。そういう意味では大きな先行例になったのかなとは思います。


 そういや、こいつの玩具については、なかなかヒドい思い出があったりします。リアルタイムの頃に、叔父さんかなんかが家に来たときに、おみやげにホワイトベースとコアファイターのゼンマイで動く安い玩具を買ってきたんですよ。それで、心底「ビミョー」と思いつつも、まだ物心つくかつかないかの弟にホワイトベースの方を押しつけて、自分はまだ少しはカッコ良いコアファイターの方をせしめたという(笑)。


 ほかの連邦軍の宇宙艦艇でいくと、マゼラン級宇宙戦艦やサラミス級宇宙巡洋艦は、いかにも「宇宙戦艦」といったおもむきのデザインをしています。このあたりのデザインラインは『さらば宇宙戦艦ヤマト』の地球防衛軍艦艇の影響が見受けられ、そんなに破綻はしていません。コロンブスなどの輸送艦も、ただの箱にブリッジと推進部が付いてるだけのデザインは、効率重視の連邦軍らしい輸送艦だと納得できるものでした。


 ただ、作中での扱いは味方雑魚以外の何物でもなく、第4話で破壊工作されて出撃前に座礁してホワイトベースの主砲で吹っ飛ばされるマゼラン級とか、第38話でシャアのザンジバルに単艦で挑んであっさり返り討ちにされたワッケインのマゼラン級とか、どうも外見ほどに強そうな印象が無いという。


 個性という意味では、ジオン側の宇宙艦艇の方が個性的でした。ムサイ級軽巡は、シャア専用ムサイ(後付設定でファルメルという艦名が付く)とか、主砲塔を普通は三基積んでるのに二基しかない艦があるなど、本編中で既にバリエーションがあったという点で面白い宇宙艦艇でした。格好もユニークで、『Zガンダム』のアレキサンドリア級など、のちに同じデザインコンセプトの艦艇がいくつも出てきます。


 こいつについては、何と言っても私が最初に買ったガンプラが「シャア専用ムサイ」だったという思い出があります。目の前で「シャア専用ザク」を買われて、残っていたムサイを買って帰ったという(笑)。でも、色も塗ったりして、結構あとまで残ってたような気もしますね。大気圏突入カプセル「コムサイ」が分離するというのが、玩具っぽいギミックで面白かったのかもしれません。


 チベ級重巡はコンスコン部隊の旗艦として登場するのが印象的ですが、何しろ「たった三分で十二機のリック・ドムが全滅!?」って話だったので、つまりは噛ませ雑魚以外の何物でもなかったというのが不幸(笑)。後付設定でも「旧式艦」みたいな扱いをされています。


 では、それに対する「新型艦」はというと、ザンジバル級機動巡洋艦になります。宇宙艦艇はいろいろありますが「機動巡洋艦」を名乗っているのは本級だけのオンリーワン艦種です。これはランバ・ラル隊が乗って地上に降りてきたときが初登場で、意外に出番は早いんです。このときは、まだメガ粒子砲を積んでなくてサーチライトで幻惑したという。オイオイ、いくら輸送任務だからって艤装ぎそうがまだの艦を実戦投入するなよ!(笑) ……とツッコんでいた自分が自作では同じ事をやってしまったり(笑)。


 こいつは、のちにシャアの乗艦となって、大気圏離脱直後のホワイトベースとすれ違いながら砲撃戦をやらかすのが印象に残っています。結局最後まで沈むことはなかったようです。


 デザイン的には流線型をしていて、一応こいつなら大気圏突入しても不思議はなさそうだなと思わせる形はしています。作中の活躍もあって、ジオン側では結構好きな宇宙艦のひとつです。


 ほかのジオン軍艦艇でいうと、ドロス級宇宙空母というデカくてMSもメガ粒子砲も山ほど積んでるヤツがおり、作中でもア・バオア・クー戦ではNフィールドの防御のかなめになっていました。……が、実のところガンダムやホワイトベース隊と直接からんでないので、作中ではそんなに印象が残っていません。二次資料とかで、デカい、凄いの印象を与えられた感じです。シミュレーションゲーム『ギレンの野望』でも搭載量の多さと耐久力の高さを生かして移動基地的に使っていましたが、何しろ高いわ資源は食うわなので生産はせず、開発のときにできる一隻だけを使い回すことが多かったですね。


 あとパプア補給艦とかもいて「補給」について真面目に描写してはいるところは高評価なんですけど、正直メカ的には大して面白いとは思いませんでしたね。


 宇宙艦艇の大トリはグワジン級宇宙戦艦です。こいつもホワイトベース隊とは直接戦闘していないのですが、その割に印象に残っているのは、デギン・ザビ公王が単独でレビル将軍と和平交渉をしようと赴いた際に乗っていたのが、自分の名前を冠したグワジン級戦艦「グレート・デギン」だったからでしょうか。あとは、劇場版の最後で、シャアみたいなシルエットを乗せたグワジン級戦艦が宇宙の彼方へ去って行くというエンディングも印象に残っています。これが『Zガンダム』につながるシーンだったりするわけです。


 デザイン的には、怪獣風宇宙戦艦にビーム砲塔が載っているという感じで、それ以前の宇宙人の侵略宇宙船と、ヤマト系宇宙戦艦を折衷したようなデザインになっています。正直、そんなに好きなデザインじゃないのですが、なぜか『Zガンダム』以降もこのデザインラインやカラーリングを引きずった戦艦がネオ・ジオン系の旗艦になっています。


 ということで、今回も三千五百字になっちゃいましたよ。次はいよいよキャラクターやストーリーに入っていきたいと思います。


 君は生き延びるついてくることができるか?(笑)

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