第五話 体の異変


 目の前には、我が校の「生徒」でも「先生」でもなく、警察官の服を装備した「顔のない人」だった。

 俺は初めて「顔のない人」と出会った。そもそもの話、「顔のない人」は人なのか。


「ぐぎぎぃあ……」

「しゃべった、口がないのに!」


 トウマが声を上げてしまった為、トウマとルリアの存在がバレた。

「顔のない人」はギョロッと首をこちらに曲げる。かなり、体がデカい。


「あー、あれは確かに人間だけど人間じゃないな」


 だろうな! みたらわかるし、なによりこの状況ごっつい!


「こっちに来るな。私は大丈夫だが、生身の人間の貴様だと骨ぐらい余裕でバキバキにやられるゾ~^」

「なにこいつめちゃエグイエイリアンじゃん。怖すぎかよ」

「私ならワンパンだが、この状況はなかなかに楽しいからこのままにしているとしよう」

「いやはよヤッチャッテください」


 素直にこの状況を楽しめないのだが、これ俺は正常だよね? 隣のゴスロリが異常なんだよね?

 そう言いながらトウマは絶叫する。顔のないエイリアンは「そんなのカンケーねぇ!」とでも言いたげに襲ってきた。トウマは戸惑いながらも顔だけ逸らし、なんとか右腕のエイリアンパンチを避ける。


「はやぁあッ!?」


 はやすぎるパンチに少しだけしか身体がついてこない。

 エイリアンは又もパンチを繰り出してくる。


 シュッ! バシュッ!!


 風が耳を切りそうなくらい早い。そして絶対に重い。明らか普通の人間ではないのがわかった。

 連続で何発も放たれるパンチ。


「……このままじゃ、埒がッ、明かない!」


 ジリ貧だ。

 そう確信した俺は少し体制を整え、反撃体制に入る。

 相手の、エイリアンのパンチが俺の体を打ち抜こうとした瞬間……。


 ――――――ここだ。


 「ブフぁっぁ!?」


 会心のカウンターを打ち込む。相手の左からの攻撃が出た瞬間に一度体をかがめ、ダッキングの状態に入る。そのまま左フックを相手の右わき腹、つまり急所である”リバー”を狙う。

 完全にボクシングの世界である。


「……ふむ」


 なにやら少し驚いたようにルリアは声を漏らす。

 顔のないエイリアンは少しダメージが入ったものの倒れてはいない。

 またすぐに立ち上がってきた。

 トウマはもう息が上がっている、逆境。この一言ですべてが片付くほど、状況は見苦しい。だがそれは見た感じそう見えるだけで、トウマの見ている状況とは遠くかけ離れていた。


「ウガァァァァァァァ!!」


 エイリアンはおたけびを上げる、校内が揺れる。

 そしてその咆哮と共にトウマは飛ぶ。トウマの体が飛んだと同時に足が上がり、標的に目掛けて強力な蹴りを入れる。

 一瞬だった、エイリアンの頭が飛ぶのは。

 相手の頭が血を巻まき散らしながら宙を舞う。胴体は電池が切れたロボットみたく、急に動かなくなり地面に倒れる。トウマは無事着地すると。


「いやな感触だ」


 エイリアンの死体を見ながら言った。

 首が地面を転がり、胴体ともに生気が失われていくのが見ているだけでわかった。



「キーパーがガッチリ持ってるサッカーボールを無理矢理蹴り上げる、感覚に近いな」

「意味が分からん」


 すごく具体的な説明をしたつもりなのに1880万光年先から来た幼女には伝わらなかった。


「これ、死んだの?」


 そしてトウマはとても怖かった。

 エイリアンとはいえ、人型だったのだ。罪悪感を覚えてもおかしくないだろう。

 ふしぎなことにマッタクわからな




 い  アア
















































































 なにもワカラナイ いあ は





 gameover。

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