ブラウニー

 あなたは屋敷しもべ妖精のドビーをご存じだろうか。ハリー・ポッターでお馴染みの彼は魔法使いの館に棲みつき家事をやってくれる妖精の1人だ。ヴォルデモート卿が権力を振るっていた当時は彼らの扱いも奴隷のようでドビーたちはとても苦しんでいた。そんな窮地を救ってくれたのがヴォルデモート卿を倒してくれた幼いハリーだったのだ。ドビーはそんな境遇からハリーにとても恩義を感じ、彼を何かと助けようとしてくれる健気な存在である。

 そんな屋敷しもべ妖精が実際にイギリスにはいるらしい。

ただ、彼らはドビーのように親切だが人に従順という訳ではなく、気に食わないことがあれば抗議もするし、他の妖精たちと同じで気まぐれを起こして人間に悪さをすることもある。

 ブラウニーと呼ばれる彼らはとても有名な存在だ。精に関する本を漁ってみても、彼らの項目は文字や逸話で溢れかえっている。ブラウニーの女性版とも言われているマイナーなシルキーとはまったくもって対照的である。

 ブラウニーはイングランド諸島のいたるところに棲みついている。もしくは似たような種類の妖精がいる。ウェールズで彼らはブカ、スコットランドの高知地方ではボダッハ、マン島ではフィノゼリーと呼ばれているらしい。

彼らは他の妖精に比べると人に親切で、夜の間に家のことを何でもこなしてくれるのだ。お礼はコップ一杯分の上等なミルクや蜂蜜、お菓子といったちょっとしたもので十分。お礼の品はブラウニーがわかる場所にさりげなく置いておく必要がある。ただしブラウニーに対する敬意を忘れそれを態度に表そうものなら、彼らは親切なホブ・ゴブリンからとたんに人に悪さをするボガードに成り下がる。

 他の妖精たちもそうだがブラウニーは働いていることを見られるのを嫌がるという。彼らが粗末な衣服を身に着けているからといって、上等な服を贈るのもあまりお勧めできない。

 彼らは服を見つけたとたん、有頂天でその服を身に纏い2度と姿を見せてくれなくなることがあるからだ。これには服を自慢するために妖精の世界に行ってしまうなど色々な説があるがはっきりとは分かっていない。どういうわけか彼らにお礼を直接することはあまりよくないことでるとされている。

 ブラウニーにお礼をしていけない理由には諸説ある。

 スコットランドのベリックシャーでは、彼らは原罪に苦しめられる人間のために使わされた神の下僕であるからお礼をしてはならないとされている。また、別の説になるとブラウニーは真に自由な妖精であり、自分たちを束縛する報酬などの対価は貰わないのだという。また別の説だと彼らはお礼をされるまで奉仕を続ける義務があるというのだ。

 また、ブラウニーはキリスト教が大の苦手で聖句を唱えられたり、聖水をかけられてもその家からいなくなってしまう。これは妖精たちが天から追放された堕天使であるせいかもしない。

 さて冒頭でご紹介したハリー・ポッターシリーズのドビーに関して面白いことが分かった。彼はJK.ローリングが考えた架空の妖精ではなく、実在する妖精らしい。

 ドビーと呼ばれる妖精がヨークシャーとランカシャーにいるのだ。ドビーは特定の妖精の名称というよりこの2つの地域に生息するホブ・ゴブリン(善良な妖精たち)をさす言葉らしい。彼らはブラウニーと非常によく似た性質を持っているが、ブラウニーよりも少々悪戯好きなようだ。

 ハリー・ポッターに出てくる屋敷しもべ妖精たちは、ブラウニーを始めイギリス中にいる善良なホブ・ゴブリンたちをモデルにしているのかもしれない。




参考文献

妖精辞典 キャサリン・ブリッグズ編著 冨山房

妖精 草野 巧著 新紀元社

妖精 who,s who 

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