詩集「狂気と猟奇の幻」

武市真広

月夜の狂気

 月夜の狂気

 

 君の寝顔を横目で見て漠然と殺したくなった

 

 理由などない


 唐突な思い付きだ

 

 窓から差し込む月明りが

 

 寝息を立てて眠る君の顔に注がれて


 その顔を見ると


 僕は無性に君を殺したくなった

 

 憎いからとかそんな陳腐な理由じゃない

 

 その美しさを


 永遠のものにしたいからという訳でもない

 

 僕はそんなに偏愛気質ではない

 

 何か感情が働いた訳じゃない

 

 ただ当たり前のように殺したいと思ったのだ

 

 義務感とか使命感でもない

 

 当たり前の動作のように

 

 僕は君を殺したいと思った

 

 これを狂気と言うのかな

 

 だったら狂気は酔いだ

 

 思考が働かなくなって

 

 頭もぼんやりとしてきて

 

 なんだか分からないけど

 

 気持ちが昂る

 

 そして僕は君を殺した

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