第2条 適用範囲

 この条文はなかなか驚かされる。


 本規約が『本サービス』に対する全ての事柄に適用することをうたうのは当たり前だ。そのための利用規約だ。本サービスを利用するにあたって「こうしてくださいね」をまとめたものが利用規約である。


 また、利用規約の他にもKADOKAWAが別に定める規約、ガイドラインが適用されるものと明記している。運営よりも上位であるKADOKAWA本体が定めているルールに従いなさい、というのは当たり前である。


 ではどこに驚いたのか、というと。

 利用規約をそのまま引用しよう。


『本規約と当社が別途定める各種規約、ガイドライン等の定めが異なる場合には、後者の定めが優先して適用されます。』


 当社が別途定める各種規約、ガイドライン等にあたるものも合わせて整理したい。本サービスの中で該当する物は「カクヨム小説投稿ガイドライン」がある。小説投稿という言葉を冠しているが、内容としては会員全体に向けられたガイドラインである。


 『当社』から提示されている該当するものは個人情報保護の方針として、「プライバシーポリシー」「サイトアクセス情報の取得について」「特定個人情報の適正な取扱いに関する基本方針」がある。つまり、カクヨムのサービス利用にあたっては利用規約を含めて5つのルールを遵守する必要がある。


 ちょっと立ち止まって考えて欲しい。KADOKAWAが規定するものはこの際置いておこう。だって運営よりも権限を持っている法人が提示するものだから、従わない理由はない。ポイントはカクヨムの中で決められている「カクヨム小説投稿ガイドライン」だ。言葉の意味を考えて欲しい。ガイドラインというワードも利用規約というワードも第1条での定義がないため、辞書上の定義を採用する。


 三省堂大辞林より引いてみれば、ガイドラインは「政府や団体が指導方針として掲げる大まかな指針」としている。指針は「取るべき態度や進むべき方向を示す方針。」であり、方針は「これから進むべき方向。目指す方向。」。


 一方、利用規約というワードを「利用」と「規約」に分けて字を引けば、利用については「物の機能・利点を生かして用いること。また,単に用いること 」または「自分の利益になるようにうまく使うこと。手段・方便として用いること」とある。規約は「人々の協議によって決めた規則」とあり、規則とは「行為や手続きなどを行う際の標準となるように定められた事柄。きまり」である。


 気付いただろうか。利用規約でうたっている内容は簡単にいえば、利用規約とガイドラインで食い違っていることがあればガイドラインを優先してね、ということだ。しかし言葉を整理すれば、利用規約とガイドラインの関係性は利用規約が主でガイドラインが従である。


 これから解説を続ける利用規約だが、カクヨム小説投稿ガイドラインと食い違う内容があればガイドラインの方が優先されるわけだ。これは矛盾以外の何物でもない。この時点で利用規約が規約として機能していないことを高らかに宣言しているのである。

 『運営でも分かる利用規約の読み方』ではなく、『運営でも分かるガイドラインの読み方』を先に作ったほうがよいのかもしれない。

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