第1話 『沈黙の霧』の中で (シャルロッテ・グランロッシュ著)

「おい、お嬢、まだ着かねえのか?」

 イライラしたタオの声。

 ここは沈黙の霧の中。次の「想区」を目指して、「沈黙の霧」の中を進む、レイナ率いる『調律の巫女一行』だが、先ほどから、一向いっこうに次の想区に着かないのだ。

「ま~たお嬢のポンコツ発揮か…イッテッ!」

 レイナにしたたかに殴られるタオ。

「アンタはカオステラーの気配がわかんないでしょ。だったら黙って付いて来なさいよ!」

「本当にこちらでいいのか、巫女」

とクロヴィス。

「アンタまで!」

「何で俺は殴ってクロヴィスは殴らないんだよ」

「タオ兄は殴りやすいのでは?」

とシェイン。

「ごもっともだね、シェインちゃん」

とファム。

「なんか、おねーさん達に付いて行くの、不安になってきちゃった」

 アルセーヌ・ルパンの孫であるクラリス…サードがへたり込んだ。

「止まっていては尚更なおさら進まないぞ」

 それまで黙々と歩いていたエイダが仲間達の方を向き、注意をした。

「そうだよみんな、頑張って歩こう」

とエクス。彼とエイダとクロヴィス、シェイン、ファムは、それまでレイナにぴったりとくっついて歩いていた。

「チッ!」

 イライラしながら歩きだすタオ。

「ハァ~ッ…」

 深いため息を付きながら立ち上がるサード。

 ニコニコ顔で真面目組に続くファム。

「あっ、霧が晴れるわ!」

 レイナの声に、タオとサードの顔が輝く。

 霧が晴れた時、一同は仰天した―――

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