myself
木谷彩
1997/11/30
寒冷前線は雷を伴う激しい雨を降らせる。
前線通過後は寒気に覆われるため、気温が下がり、一歩一歩冬の温度へと移行してゆく。
やがて前線は訪れなくなり、大陸からの季節風が吹き付けるころには、大平洋に面したここでは乾いた風と晴天が続く。
自分の影の輪郭が薄くなる。
日ざしが弱くなっていく。
でも、そんなに落ち込むこともない。ほら、あと3週間で冬至。
あとは少しずつ長くなっていくだけ。
ぼくという存在がいるだけで、救われる人はいるだろうか。
こんなことを思うだけで、かなり思い上がっているような気もするが。
うん、でも、そう思わないとなんだかやっていけないんだよ。
別にラブラブってわけでもないし、まあ、本当はその反対だし、
このあふれんばかりの愛という気持ちをぶつける相手もいないし、
誰かに注がれているわけでもないし。
自分がどうしてここにいるのか、ということをずっと考え続けてきていた。
まだ、答えは見えない。
死ぬまでわからないということも気付いている。
誰かに会うために生まれてきた、なんてことは、おそらく、詭弁だ。
もっと普遍的な答えがあると思う。
激しい雨が降ったあとは、いつも空気が乾くように、
ぼくの心も乾いている。
もしも、すべてが偶然の産物というのなら、
今すぐ、ぼくは命を絶とう。
意味のないものなら。
myself 木谷彩 @centaurus
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