1+1=3になる

カゲトモ

1ページ

「あぁ~寒い寒い」

 強さを最大にしたコタツにスッポリと肩まで入る。見上げた天井がこんなだったっけと思うのは、引っ越して来てから数えるほどしか帰って来ていないからだ。

 両親がここへ引っ越して来た時、俺は既にマスターの店で修業していたし、帰省は年に二回という親不孝者だからだ。

 いや、連絡がないのはいい知らせ、的な奴で。と言うか、元々自由な教育方針だったし、うるさく帰ってこいとは言われなかったからだと思うし、そのせいにしとく。

「ミカンあるわよ、食べる?」

「んー食べる」

「近所の友達から美味しいお茶貰ったから、これも入れようか」

「んー」

 チラリ、と見えたミカンの段ボール箱には某有名産地の名前が書かれてある。スーパーでも購入できるだろうが、多分あれは産地から送られて来たものだろう。その土地の友達に。

転勤族だった両親は全国に友達がいる。社交的で明るいから。いや、そうならないといけなかったのかもしれないけど。俺にもその血は流れているけど、両親程すぐに溶け込めたりは出来なかった。

だからこそ、あんなに引越ししたのに友達は全国にいるどころか、ほぼいないわけで。

今はもう年齢的なこともあり、転勤はなくこの土地に居座っているらしい。田舎で何にもないけど、人と人の距離が近くて温かい。

 そして茶も美味い。

「あれ、父さんは?」

「んー、お宮さんに行ってる」

「へぇ、大変だな」

 雪こそ降ってないが、ここは気温が低い。出来ればあんまり外にも出たくないし、出ても遊ぶようなとこないけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る