せっかくだから好きなものについて考える(小説編)

 基本的なテーマで

『これは実際どうだろうか?』

と思うものについて話す事が多いので、たまには好きなものについて話すとしましょう。好きなものと言ってもジャンルを絞らないとまた謎の自白になってしまうので、中学高校からの読書遍歴の傾向でそれを推し量ってみようかと思います。


 中学か……私が一年生の時に〇崎〇が罪のない幼女を連続で誘拐して殺害してくれやがったので、ホラージャンルの盛衰を間近で見た、という記憶が濃いです。その事件が起こるまでは、もうね、小学5年生くらいからかな? 世間にはホラー作品が溢れていました。雑誌棚の映画雑誌はホラー特集しまくりでビビりだった私はそちらを見ない様にする程の恐ろしい表紙ばかりでした。ビデオデッキも台頭して来たのでエロとホラーがあったはずですが、親戚に連れられて行った先で見た棚には

『むごい……』

としか言い様のない人体破壊図が溢れていました。国際ファンタスティック映画祭でも9割の出品作品がホラー。『死霊の~』、『悪魔の~』、『地獄の~』という邦題が溢れていました。テレビCMでもホイホイホラー映画の情報が不意打ちでぶちかまされました。『死霊のはらわた』、『エルム街の悪夢』、『ポルターガイスト2』、『バタリアン』もこの頃の作品で、特に『死霊のはらわた』のパッケージは私を硬直させるには十分でした。初見が道端の新聞の広告だったんですが、白黒でも破壊力が絶大で、あれにはしばらくあちこちで肝を潰す羽目になりました。

 そんなあれこれが、ある男が起こした事件のせいで、一斉に規制を食らい、周囲から消えたのです。事件内容が無理もないのですが、当時のマスコミはそこから一歩踏み込んで、犯人がオタクだったからという所に全ての責任を押し付けて

『オタクは全員が犯罪者予備軍』

というレッテルを貼ったのでした。

『どいつもこいつも幼女を常に狙っている』

みたいな言われ様になってしまったのです。そんな訳ないのにひどい話だと思いませんか?

 影響されやすいうちの親などには、漫画を描くという創作活動は何が気に入らないんだか知りませんがとにかくボロッカスに扱われました。結果、それがまずい方向に影響しました。親に対してはざまあみろって感じですが、

『文系不良になりたい……』

と思う様になったのです。ヤンキー気質方面に流れるのではなく、破滅系登場人物が右往左往する文学作品に詳しく、勉強もきちんとするけれど、オタク気質の人間にはとてつもなく窮屈な世間には斜に構える。そういう生き方に憧れたのです。

 となると、悪事は働かないけれど世間が言う『普通』だとか『正義』などくそくらえです。

 まず、ホラーは消えましたけれど、代替品という事なのか猟奇殺人事件考察ブームが訪れました。ドラマでも漫画でも小説でも心理捜査官が一大ブーム。ホラーの代わりに始まったと言えましょう。はっきり言わせてもらえば、そちらだってホラーブームと変わらずグロテスクでしたし、ショッキングでした。普通にそれらは書店の本棚に並ぶ訳です。

『作り物を迫害して、実在の人間の起こすむごたらしい事件の恐ろしさの方を擁護する大人達』

という風にしか見えませんでしたね。しょっぱい話だぜ。

 ちなみに猟奇殺人事件考察ブームは私には合いませんでした。試しに一冊、確か二〇文庫から出ていた本を一冊読んでみましたが

『あ、自分、こういうのは遠慮しときます』

とギブアップしました。血しぶきはどうにかこうにかスルー出来ますが、そういう猟奇殺人のグロテスクさと狂気は私にはきつ過ぎたのです。『多重人格探偵サイ〇』は途中まで興味深く読んだのですが。

 それはさておき、さかのぼりますが、ぐぬぬと思う私はどうしたか。

『耽美』というジャンルに分けられる本を調べました。今でいうBL、所謂ボーイズラブの意味よりはるか前の意味です。読んで字の如し、美に耽る。

 今より果てしなく不便で不遇な時代の人々がそれを堪能するには、ある時には法を犯し、命がけでそれに辿り着くしかありません。その果てに見た美しいもの。それは我々の想像を絶するものでしょう。

 何より、そういう人達が報われる訳がありません。報われなくてもそれに向かって突き進むのです。そして、命がけで後世に残すべく書き記す。ペンで。

 そりゃすげえ。マジでロックだぜ!

 という訳で、報われない辺りに激しく心を打たれてしまった私は、あくなき追求の道に足を踏み入れたのでした。ネットはないので、小説ジャンルの海外タイトルからひたすら調べるしかありません。

 どう考えても猟奇犯罪考察書籍ブームに足を踏み入れないだけの、そちらのジャンル愛好者でしかありません、本当にありがとうございました。

 それに気付かないまま踏み出した私のひとまずの心当たりとしては、まず国内では少年探偵〇シリーズ以外の江戸〇乱歩作品。それがある時にはホラーよりホラーで、破滅志向でした。推理などせぬ。

 漫画では手塚治〇作品でもそれ以外では○川次郎などのサスペンスを読み、『〇計仕掛けのオレンジ』(完全版はまだ国内では出版されてませんでした)を読み、『ち〇ま文学の森』というシリーズの『悪の哲〇』というアンソロジー本を読みました。

 そこでは

『悪と一口にいうが、さて、それではどういうものが悪徳なのか』

というテーマに沿って、古今東西の随筆作品が収録されていました。『正義』という概念の窮屈さ、欺瞞、卑劣さなどが記されていた記憶があります。

 絶版になって久しく、プレミアが付くのなら、当時無理してでも買っておけば良かったぜ!(嗚咽)

 更に何故かアンチヒーロー枠にも憧れて、それは『必殺仕事〇』が埋めてくれましたが、池〇正太郎の藤枝梅〇にも行き着いたのでした。『殺〇の掟』以外はそれほど読めてませんが。

 そんなあれこれを経て、やがて、イジドール・デュキャッ〇という人が出した詩集、『マ〇ドロールの歌』(集英〇文庫版がオススメ)に辿り着いたのです。

 著者は前述のイ〇ドール・デュキャッス伯爵。彼はこの詩集を書く前にある美少年と恋に落ちたらしいのですが、無理解な周囲の人間にその恋仲を引き裂かれたそうな。逆上した彼はホテルの一室に引きこもり、別室の人間の噂になるほどコーヒーを飲みまくって、昼夜問わず、『造物主』、すなわち神やそれを頂くあらゆる一般的なものを呪う詩を書き殴ったのでした。

 極普通の男女関係。

 無垢な子供。

 健全な肉体の持ち主。

 そういったあれこれを、自身の詩の中で徹底的に破壊したのです。

 普通に読むと

『そ、そうかね』

としか言えない、正直良く分からん詩集なのですが、集英〇文庫のあとがきと一編毎のサブタイトル担当の方は実にいいジャンル名をそれに冠してくれました。

 それは何と『パンク』。そう思って読みますとこれが実に分かりやすい!

 もしあれを読まれて、

『未だに内容がさっぱりこんなんじゃよ……』

としょんぼりされている方は、パンク詩集だと思ってお読み頂ければ、多少は理解がしやすくなると思われますので、ご参考になれば。


 長くなりましたので、この辺で。また改めて考えたいと思います。

 ではまた(`・ω・´)ゞ

 

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