そうめんポトフ
「玉ねぎが半玉、人参が半分、キャベツが4分の1も残ってるわよ、どういう事?」
「そりゃあ、まるまる1個とキャベツは半玉を、半分ずつ使ったんだからもう半分残るのは当然だろう。」
奏恵は、あまり野菜を買い溜めしたがらない。
「昨日の"デミグラス焼きそば"は美味しかったわ。でも今日は今日、残った玉ねぎ、人参、キャベツを使って何かを作って。」
"できなければ死刑よ"等と言いたい訳では無いのだろう。先述の通り、ただ冷蔵庫を綺麗にしたいだけなのだ。万が一、義彦を打ち首にしたとして、新しい料理が楽しめず損をするのは奏恵の方だとは本人も分かっているハズだ。
「できなければ減給よ」
「どこの職場だよ、それ」
「いい?会社も役所も全部、"契約"から成り立っている。…私達の結婚もそうよ、私もたまには義彦の為に何かをするし、義彦は私の為に何かをする。そういう契約じゃないの?」
"たまには"の頻度を疑うべきなのだが、夫婦の前提は崩してはいない。余計なワードが混ざっている割には、バランスよく持ちつ持たれつであった夫婦関係しか思い当たらないのだ。
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*そうめんポトフ
材料(2人分):
水…400cc
コンソメ…大さじ2杯
塩…2つまみ
麺つゆ…大さじ2杯
料理酒…小さじ2杯
そうめん…2束
玉ねぎ…1/2個
人参…1/2本
キャベツ…1/4玉
鶏むね肉…100g
道具:
鍋2つ
包丁&まな板
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「ところで、料理酒って何しに使うの?」
料理の"り"の字もあまり知る事の無い奏恵からすれば、何か意味があるのか?と疑問になる所である。これについては義彦も"アルバイトをした時に"教えてもらった事であった。
「食材の臭みとか、味を整えるために使うんだよ。料理酒を使う使わないで結構、鶏むね肉とか食感が違ってきたりするんだけど。」
「いい方に出来上がるなら、積極的に使うべきとは分かったわ。」
料理酒の本質は"アルコール"が沸騰と共に出ていく事にあるというのも、アルバイトをした時に聞いた話であった。
勿論の事、沸騰し出ていくアルコールが食材の臭みを持って行くとか、料理の味を均一にするとかいうのもアルバイト先で聞いた話である。
ちなみに鶏むね肉の場合であれば、料理酒を使う事でパサパサの食感もしっとりに変わってしまうという驚くべき魔法であるから侮れない。
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*作り方:
①玉ねぎ、人参、キャベツはお好みで切っておく
②鶏むね肉を一口大に切った後、料理酒をかけてもみもみ
③そうめんを茹でる
④別の鍋に麺つゆ、コンソメ、塩を水と一緒に投入し火をかける。
⑤沸騰したら野菜と肉をすべて投入し、全てに火が通るまで煮込み続ける(アルコール分はその間に飛ぶ模様)
⑥そうめんが茹で上がったら水気を切り、④をよそって完成
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「そうめんって万能よね」
「本当、何にでも合うよ」
一口目にして、義彦の減給が避けられたのは言うまでも無い。
「そうめん、軟らかくしてる?」
「ああそうだった。…茹で具合とか量で、汁物にして添えたりできるんだよ。」
「ふうん、万能なのね。」
"義彦みたいだわ"と呟いた小さな声を聞き逃し、"何か言った?"と聞いてみるも"気のせいよ"とツンとした答えが返ってきた。
夜の9時という事もあり、胃に負担がかからない料理を考えたところ、そうめんを軟らかく茹でればいいという結論もあるが、それは作る人の工夫なのだろう。
やり方1つで色んな顔をできるというのに、シンプルな料理であった。
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