大人のチョコレートムース
"理不尽に怒る事がありますがご了承ください"
最近の若い女の子の取扱説明書には大体こう書かれている。…しかし、結婚するに当たってそんな事を取扱説明書に書かれては困ったものだろう。
"私、理不尽に怒る事があるんですよー"と、職場の女の子にさらっと言われる=私は気まぐれに地震や津波を起こしますと言っているのと一緒で、本当に災害レベルでしかないと義彦は思っている。
不幸中の幸い、奏恵は理不尽に機嫌を悪くする事は無いのだ。機嫌が悪い時にも理由があるから、義彦も分かりやすい。
「職場の若い子が、気分で仕事をするからムラがあり過ぎて困るのよ」
恐らく、"私は災害です"的な説明が書かれている女子だろう(困った事に書いていなくても災害レベルという上ランクもいる…)。
「上が怒られるのは分かるけど、もっと人の事を考えて欲しいわ。注意した所で癇癪起こすんだからもう少し大人になって欲しいものね。」
恐らく、震度5強、津波警報レベルの話である。義彦災害対策センターは観測した瞬間に逃げ出したい気持ちであった。
「義彦!」
"はいっ!"と襟を正す義彦。市役所の職員なのだから、こういう警察学校のような事はやめて頂きたいと願うばかりだ。
「ストレスが発散できる料理は無いの?」
「食べる事で発散できるんじゃ…」
「そんな事を言ってるんじゃないわよ」
そうなると料理をする行程でストレスを発散するしか思いつかないのだが、都合の良い事にそんな料理もあるのがこの小説であった。
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*大人のチョコレートムース
材料(2人分):
板チョコ…2枚
ココアパウダー…大さじ1杯ちょっと山ぐらい
豆乳…250ml
ホイップクリーム…200ml
ブルーベリージャム…大さじ4杯
板ゼラチン…8g
道具(なのか?):
電子レンジ
でっかい丼(レンジいけるやつ)
茶碗
泡だて器
まな板
日頃のストレス
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「本当に、この料理でストレスが発散できるの?」
「たぶん」
「…分かったわ。できなければ死刑よ?」
そんな事で死刑になってしまうご家庭は古代ローマか江戸時代の悪代官ぐらいしか聞いた事が無い。しかし悪代官奏恵様の有難い所は、本当に死刑にしてしまうと食事に困るので義彦を絶対に殺処分する事は無い所であった。
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*作り方:
①予めゼラチンは水でふやかしておく
②まな板に板チョコを乗せ、これでもかと叩きまくって粉微塵にする
③でっかい丼に豆乳を投入し、電子レンジで40秒
④③の一部を茶碗に移し、ココアパウダーとよく混ぜる
⑤③の残り多量にジャムを入れ再度レンジで40秒し、粉微塵になったチョコを投入し、これでもかというぐらいに泡だて器でかき混ぜる
⑥温まったら④とふやかしたゼラチンを入れ、力の限りよく混ぜたものを容器に注いで一晩冷やして固めれば完成
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「疲れたわ、作るのだけで」
「ストレスを受け入れてくれる、デザートの有難みがよく分かっただろう?」
「食べてみるまで分からないわ」
問題は味である。そこが達成できていなければどんなにストレスを発散出来ていても悪代官は死刑を命ずるという結果になってしまうのだ。
…そんな事を考えていたら寝不足になった義彦であるが、翌朝にそれが杞憂と分かった時には不安になったのが馬鹿馬鹿しくなったのであった。
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