妖狐のケーキ屋さん#12

「キリ君!」


「ヴィルゴさん!」


 突然大声を出して入店してきたヴィルゴさんにつられておれも大声で名前を叫んでいた。


「この3ヶ月本当に辛かったわ」


「3ヶ月?」


「そうね、ワタシがいた世界とこの世界では時間の流れが違うからキリ君にとっては2週間程度よね。って、キリ君? な、涙が出ているわよ」


 ヴィルゴさんにそう言われておれは自分がヴィルゴさんに会えたことが嬉しくて涙していることに気が付いた。


「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」


「見苦しくなんて無いわ。むしろもっと見せてちょうだい」


 そう言っておれの手を優しく握ってくれたヴィルゴさんの手は目をそむけたくなるほど傷だらけだった。


「ヴィルゴさん、今日はチェリータルトをご用意しています。覚えていますか?」


「えぇ、初めて食べたキリ君のケーキだもの忘れる訳無いじゃない」


「ありがとうございます」


 いつもはきっちり13個分の料金を支払ってくれるヴィルゴさんだが、今日は1個分多く渡された。


「キリ君、仕事が終わったらチェリータルトを持って来て。一緒に食べましょう」


「わかりました。今夜を楽しみにしていますね」


 おれはヴィルゴさんと約束をし、ヴィルゴさんは13個のチェリータルトを持って一旦帰っていった。



9月17日 キリマンジャロ

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