忍びのパン屋さん#12

 ユグドラシルのセンターホール付近に堂々とそしてひっそりと店を構えるパン屋『NINJA』には豊富な種類のパンがあり、パンは全て店内で食べて行くことが出来る。


「シャープさん、今日のおススメをください」


 常連のお客様であり、この店で一緒に働いているアキちゃんのお兄さんであるナツキさんにそう注文されたわたしは今日店に出しているパンの中でアキちゃんが最も自信のあると言っていたパンを出した。


「枝豆パンですか。久しぶりですね」


「今日はウチが焼いたやつだけど」


「じゃあ、味の期待は出来ないな」


「アキちゃんだって頑張っているんですからそんな事言わないであげて下さい」


 ナツキさんは冗談っぽく笑いながら枝豆パンを口にした。


「生地の塩味がまあまあ効いていて枝豆の美味しさをそれなりに引き立てていますね。シャープさんの作る枝豆パンほどではないにしても、他のパンとは違う生地のモチモチ感があるのは評価します」


 少々辛口な感想を告げるとナツキさんは枝豆パン6個分の料金をわたしに渡してきた。


「枝豆パン5個持ち帰りするくらいの出来ではある」


「ありがとうございます」


 ナツキさんにそう言われて終始不貞腐れたようなアキちゃんはうっすらと笑顔を見せて喜んでいた。



9月16日 シャープ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る