龍人のサイエンス教室#11

「こんにちは、シュガー先生」


 不意に背後から声を掛けられたぼくはうっかりビーカーから手を離してしまった。


「おっと。失礼した」


 声を掛けて来たダークエルフと思われる種族の男性はビーカーが床に落ちる寸前でキャッチしてくれたようでビーカーをぼくに差し出しながらそう言った。


「あなたは?」


「私の名前はサッギタリウス。一週間前にシュガー先生にプレゼントを贈らせてもらった者だ」


 プレゼントというのが、ぼくに知識を与えてくれたあの本であることはすぐにわかった。


「シュガー先生、私は貴方の科学の才能を私に、私たちに貸していただきたいと思っている。私と一緒に来てもらえないだろうか?」


「申し訳ありません」


 ぼくは即答した。


「あの本から頂いた知識でサッギタリウスさんのお役に立つことが出来るかもしれませんが、ぼくが今この教室から離れるわけには行かないので」


「そうか、私もあまり手荒な真似はしたくない」


 その言葉にぼくは少し身構えたが、サッギタリウスさんは何もしてくる事は無かった。


「シュガー先生、貴方の気が変わった頃にまた来ます。それまで、ごきげんよう」


 サッギタリウスさんはマントを翻し、ぼくの前から姿を消した。



9月12日 シュガー

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