アンドロイドの靴屋さん#9

「靴、作ってもらえないか?」


 そう言って店を訪れたのは身体的特徴からヒト族と推定される生物だった。


「かしこまりました。アンドロイド9283-09が担当させていただきます」


「よろしく、頼む」


「では、初めにお客様のご要望をお聞きいたします」


「そうだな……」


 ヒト族の男性と推定されるその生物が要望を口にした瞬間、アンドロイド9283-09に重大なエラーが発生した。


「重大なエラーが発生しましttttt。ご要望を確認いたしました。少々お待ちください」


 データ上の要望欄は何も示されていない【NULL】となっていたが、アンドロイド9283-09はデータとは関係なく靴を作成していた。


「考えていた通りの靴が出来た」


「お客様、申し訳ございませんがこちらの商品はエラーによって作成された不良品でございまして」


「エラーではなく私が頼んだ通りの靴だ。ありがとう」


 ヒト族の男性と推定される生物はアンドロイド9283-09が元々請求予定だった金額を支払うと靴を手にしてその場から揺らめくように消失した。



8月31日 アンドロイド9283-09

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