龍人のサイエンス教室#1

 ユグドラシル4階にある教育ルームでぼくはユグドラシルの近くにある小学校からやって来た小学3年生の児童に作りたてのカキ氷を見せびらかしていた。


「さぁ、ぼくが持っているこのカキ氷。こんな暑い日には是非とも食べたいよね?」


 ぼくの問いに児童はカキ氷を見つめながら声を揃えて「食べたい!」と叫んだ。よく見ると引率の先生たちもカキ氷を凝視していた。


「カキ氷はこの授業の後のお楽しみとしておくとして、皆にぼくからいくつか質問をしたいと思います。まずは簡単な質問から。カキ氷って何で出来ている?」


 小学3年生の児童をあまりにも馬鹿にしたような質問に児童たちは戸惑いながら「氷!」と答えた。


「そう! 氷だね。続いて次の質問。氷は何色?」


 そう聞くと答えは「透明」と「白」に分かれた。


「正解は……どちらも正解と言えるね」


 ぼくの回答に児童たちは不服そうな表情を見せた。


「はい、ご注目! ここに透明な氷があります。これは光が一定の方向に進むか反射されることでこのように透明に見えています。この氷をカキ氷機に入れて削ると……氷はカキ氷機で削られてしまったことでカキ氷の表面に凸凹が出来てしまい光が一定の方向に進めなくなってしまい色んな方向に反射してしまうのです。これによって透明だった氷は白い氷になるのでした。分かったかな?」


 わかりやすいように努力したつもりだったのだけれど、児童のうち半分より少し多いくらいの児童は納得をした表情を、半分より少ない児童はよく分からない表情を、ごく少数の児童はわかったような表情をしていた。


「詳しい内容は学校で先生からまた教わると思うので今日の授業はここまで。今の授業の事を頭の中で復習しながらお楽しみのカキ氷を食べましょう!」


 ぼくがそう言うと児童たちは手を大きく上げて喜んだ。



7月4日 シュガー

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