魔女のたい焼き屋#12
「どうだい? アタシの新・商・品」
閉店後すぐにユグドラシルオーナーの世渡、絵本屋のローズ、料理屋のソルト、よろず屋のサファイアを呼びだしたアタシは全員に最近の流行に乗ったたい焼きを試食させた。
「これって、白あんのたい焼き?」
尻尾の方から食べた世渡はアタシにそう尋ねた。
「ただのあんこじゃないの?」
頭から食べたローズは不思議そうにそう言った。
「ボクのたい焼きには中身が無いように見えますが」
たい焼きをど真ん中から縦半分に割ったソルトはジッとアタシを見つめた。
「僭越ながら、このサファイア、このたい焼きの仕組みがわかりましたよ」
アタシが長年見てきた中で見た事の無いたい焼きを横半分に割るという行為に至ったサファイアによってアタシの新商品の種は明かされてしまった。
「尻尾から食べると白あんが」
「頭から食べるとこしあんが」
「真ん中から割ると2種類のあんこを仕切る生地によってあんこが隠される」
「どこから食べても楽しめるたい焼き」
「素晴らしい!」
アタシがエンジェリーとデビライズとか言う洋服屋のコラボ企画に乗っかって作ったたい焼きを食べた全員の意見が種族を超えて一致した。
6月30日 ヨウカン
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