おかしの駄菓子屋#9

「これはまた珍しい人が来ましたね」


「お久しぶりです。ジャック・オー・ランタンさん」


 ジャックの名前が偽名であることを知る数少ない人物である古本屋栞こもとやしおりという名の少女は可愛いながらも邪悪な笑みを浮かべてジャックに挨拶をした。


「収集癖は相変わらずのようで」


「君といた時とは集めているものが全くの別物ですけどね」


「また、わたしと一緒に集めませんか?」


「もう少し時間が経ったらジャックも少しは自由に動けますよ」


「では、その時にまた」


 ジャックは古本屋栞を名前ではない呼び方で呼び止めて遠足シーズンの売れ筋商品である駄菓子詰め合わせセット(税込み300円)を投げ渡した。


「ジャックの奢りです」


「ありがたくいただきます」


「これはジャックの独り言です。『アレ』はジャックと一緒に集めるのも良いですけど、作るのも良いですよ」


 ジャックがそう言うと古本屋栞は自然と口元を緩めて微笑んだ。でもやっぱりその微笑みは『邪悪』だった。



6月8日 ジャック・オー・ランタン

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