吸血鬼の喫茶店#9

 午後9時20分。閉店後の掃除をそそくさと済ませ私はコーヒーを一杯だけ淹れてカウンターの席に座りラジオに耳を傾けた。


「さて、9時20分になりました。10分間のフリートークラジオ『おしゃべりは10分間』のお時間です」


 流石に毎日ではないが、聴く余裕のある時は必ず聴くようにしているラジオだった。


「今日のメールは……」


 10分間という時間の都合上、メールは1日1通のみというルールのあるこの番組を私はわくわくそして、ドキドキしながら聴いていた。


「ラジオネーム……橙色の吸血鬼さん」


「んぶっ!」


 私の背後で、クリームソーダを飲んでいたライムが突然噴き出した。


「何だ?」


「別に、何でも」


 そうは言いながらもライムは私のラジオネームを聴いた瞬間から口元を手で押さえながら必死に笑いを我慢していた。



6月7日 オレンジ

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