物陰のじいや#9

「み、見えない」


 いつもの場所でいつもの様に孫を見守っていたのだが、今日はインフィニティを訪れる客が途切れることなくやって来ていた。


「確か今日は……」


 私は懐から手帳を取り出して、独自に調べ上げたインフィニティの情報を確認した。


「何もない?」


 何もないのに客が大勢集まるなんておかしいと思った私が考え込んでいると、インフィニティから伸びる列はいつの間にか私の近くまで伸びていた。


「ここだよ、ここ! 昨日テレビで紹介されていたお店」


「でも、凄く並んでいるよ」


「昨日の今日だから仕方ないよ。でも、これだけ並ぶって事は絶対に美味しいはずだから並ぼう」


 ふと、若いカップルの会話が聞こえてきて私はインフィニティ自体にイベントがないのにも関わらず混雑している理由に納得した。


「この感じだと当分は混雑しそうだな」


 私の予想は見事的中し、インフィニティは閉店ギリギリまで店内の様子を見守れないほど混雑していた。



6月3日 ショウユ

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