吸血鬼の喫茶店#4

「お会計を」


「はいよ」


 カウンターに座っていたドワーフ族の男からそう言われた私は彼の伝票を手に取って電卓を叩いた。


「はぁ。おっと、失礼。1250円になります」


 寿命が近いのか反応が鈍くなっている電卓につい溜息を吐きながら私はドワーフ族の彼に料金を告げた。


「ごちそうさまでした」


「1万お預かりします」


 電卓を使わず暗算をすれば良いのだろうが、歳のせいかすぐに計算が出来ない私は再び電卓を叩いた。


「8750円のお返しになります。ありがとうございます。またのお越しを」


 ドワーフ族の彼を見送り、早急に電卓の電池を取り換えようと電卓を手にすると電卓のモニター部分にある文字が映し出されていた。


『GOOD‐BY』


「最後の力を使って別れの挨拶か」


 電卓の粋な演出に私の頬の筋肉は自然と緩んでいた。



5月3日 オレンジ

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