龍人の料理店#11

「ミリンちゃん、昨日から随分と機嫌が良さそうだね~~~」


「そうでしょうか? ソルトさんはどう思われますか?」


 ディナータイムまでの休憩時間中、理科さんとミリンさんの雑談を父親のような気分で聞いていると僕もその雑談に巻き込まれた。


「理科さんの言う通り、昨日からミリンさんはご機嫌なようで、いつも以上に楽しそうにお仕事をされているように感じます」


「そうですか、そう見えますか」


「何かあったの~~~?」


 理科さんはミリンさんの頬を必要以上にツンツンとつつきながらニヤニヤと笑っていた。


「実は、一昨日世渡オーナーに偶然お会いしまして」


「世渡に? それだけで~~~」


「あの、理科さん? 何故笑顔を失われているのでしょう?」


 世渡オーナーの名前を出した途端に笑顔を失った理科さんを見たミリンさんは声を震わせながら聞き返した。


「笑顔~~~? いつも通りだと思うけど~~~」


「ソルトさん、どうすればよいのでしょう? 今の理科さんは笑ってはいらっしゃいますが、目が笑っていらっしゃいませんよ」


「取りあえず、もうそろそろディナータイムの仕込みを始めないと」


 少しだけ嫌な予感がしたので僕は話を変えて厨房へ向かいながら今晩は世渡オーナーにお店に誘おうと心に決めた。



3月30日 ソルト

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