龍人の料理店③
「世渡、ジャッジよろしく」
営業時間終了後のインフィニティにオーナーを呼んだボクと理科さんはオーナーにボクと理科さんがそれぞれ試作したミニパフェを出した。
「まずは、ソルトさんのパフェからいただきます」
オーナーはスプーンを手に取りボクの作った異世界フルーツパフェを口に運んだ。
「これは! 流石ソルトさんですね。入っているフルーツは色々な異世界のものですけど、それぞれがそれぞれの味を引き立てつつも一つ一つの主張もはっきりとしていてユグドラシルのようなパフェだと思います」
インフィニティでは今までアイスクリームくらいしかデザートを提供していなかったのでパフェというものを作るのは初めてだったが中々に高評価だった。
「次は、理科のチョコレートパフェを」
オーナーは理科さんのパフェを口に運んだ途端、目を見開いて驚いた。
「理科、もしかしてこのチョコレートってエルフ族のチョコレート?」
「そうだよ~~~」
エルフ族のチョコレート自体は大して珍しいものではない。
エルフ族のチョコレートの大きな特徴として人間界のチョコレートと異なりどんな生物が食べても身体に無害であることと、非常に安価であることが挙げられる。
ただし、非常に加工が難しく、加工をするとチョコレートの味が完全に失われてしまうという問題がある。
「オーナー、ボクも一口いただいてよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
スプーンでパフェを一すくいして口に運ぶと、僕の脳が震えた。
チョコレートソースにチョコチップ、そして細かく砕かれて振りかけられたチョコクッキーどれもが一部では加工不可能と言われているエルフ族のチョコレートが使われていていた。
「理科さん、これはもう一度作って欲しいと頼んでも再現可能ですか?」
「余裕だよ~~~」
疑っている訳ではないが、理科さんのその目は嘘を吐いているようには見えなかった。
「ソルトさん、ジャッジしても良いですか?」
「はい、よろしくお願いします」
つい、エルフ族のチョコレートを使ったチョコレートパフェに気をとられてしまったが、オーナーに来て頂いた目的はインフィニティで提供する予定の新作デザート2つを試食してもらいどちらか1つを選んでもらうためだった。
「ソルトさんのフルーツパフェはソルトさんが作っただけあって文句がつけられないほど美味しかったです。ただ、理科のチョコレートパフェはシンプルでしたがそれ故にエルフ族のチョコレートを使ったという衝撃が大きすぎました。なので、今回は理科のチョコレートパフェを選ばせてもらいます」
悔しさが無いわけではないが、こればかりは納得せざるを得なかった。
「では、近いうちに新作メニューとして発表させていただきますのでその時はオーナーも食べにいらしてください」
「理科、美味しかったよ」
「ありがと」
オーナーの言葉に少し恥じらっている理科さんを見てボクは少し微笑ましく思った。
1月26日 ソルト
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