魔女見習いの占い②

 仕事の合間にユグドラシルの中を散歩していると、占いの館メトロノームを柱の陰からじっと見つめる不審な人物を見つけてしまった。


「不審な人物とは失礼な事を言ってくれるじゃないか」


 僕の心の声を読み取ったその人物はメトロノームの元店主である魔女のアンコさんだった。


「そんな所で黙ってみていないで会いに行ってあげたらどうですか? チョコちゃんも喜びますよ」


「私はチョコにあの店を継いだ。私が関わればあの店は、あの子はきっと駄目になる」


 僕にはアンコさんが意地を張ってまでそう言う理由が分からないのだが、師匠と弟子の関係であるアンコさんとチョコちゃんにしかわからない理由がきっとそこにはあるのだろう。


「大事なお弟子さんであるチョコちゃんを見守っていることに対して僕から口は出しませんけど、他のお客様の迷惑にならない程度にしておいてくださいね」


 アンコさんにそう釘を刺して僕は仕事に戻った。



1月16日 不知火世渡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る