エッセイ風日記3

年の瀬に

今年いっぱいで、学生時代に通った店が閉店するという。


知らせは、その店で仲良くなった知り合いから届いた。






年内の営業日は既に後4日ほどになっている。


電車で2時間の距離だ。


行けそうにない。


現時点では、1年に1回も顔を出せていない。






しかし、もうなくなってしまうのだ。






そこは、夫婦で営む喫茶店で、


私が当時暮らしたアパートのななめ前にある、


座席数は15くらいでジャズのかかる店だった。


営業期間は40年くらいにはなるだろう。







学生が無言でコーヒーを飲み、


窓の外を時々通る自転車を眺めていた。






その外界から離れた、薄暗く、


しかし、すれてはいない雰囲気が好きで


週に3回は通った。


そのうちに顔も覚えられて、


コーヒーだけで軽く2時間は過ごすようになった。







ゴツゴツした大きい氷が入った


アイスコーヒーを求めて、夏にもお世話になったが、


どうも冬の印象が強い。


冷たい空気の中を、店の前を通りながら


今日は誰がいるんだろうと中を伺う。







用事を済ませて、帰り道には寄らずにいられなくなり、


今度は蒸気で曇った窓の外を内側から眺めた。


定休日の前日には残り物のパンをもらったりした。







閉店までに


行けなくてよかったのかもしれない。







お別れなんてしたくない。


私は弱い。







ただ一つ気がかりは閉店の理由だ。


まさか・・・と悪いことばかり頭に浮かぶ。


老夫婦とまではいかないが、


もう若くはない。







電話した。


私が思うような理由ではなかった。


しかも、別の場所で再開するかもしれないという話だった。








再開は心から嬉しい。


必ず会いに行くだろう。







私がそこで生活していたころの店舗は


半分くらい入れ替わり、


その近辺で自転車に乗る学生は


全員入れ替わった。







あの場所だったからこその何か。


そして、それ以上の繋がり。


私には戻らない季節。







そんなことを思いながら、


電話越しに


明るく年末の挨拶を交わした。

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エッセイ風日記3 @ao-ao

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