第67話 方法

「フランさん、少し離れててください」


 ドアノブのないただの壁は解錠の方法などもちろん見ただけでは分からず、触ったりして確かめしか他無い。

 その時に、万が一にも何か触ってはいけない場所を触ってしまったことで、触った僕を含む周囲にいたフランさん達に何がしかの被害を被らないとは言い切れないので、フランさんたちには一応離れて貰うことにした。


「…………」


 フランさんとみゃーこが10mほど離れ、曲がり角を過ぎたのを確認した後、僕は色の変わっている壁の縁をなぞるようにして触ってみた。


 しかし、これと言って特に色の変わっていない他の壁とその感触に違いは無く、ひょっとするとこの色の違いでさえ偽物なのではないだろうかと思えてきた。


(ナビー、どうすれば良いと思う?)


 10分ほど触って、ノックして、掌で軽く叩いてみても何も返答の無い壁に痺れを切らした僕は、ナビーに指示を仰ぐ。


(壁全体に強い衝撃を与えれば、壊れるようです)


 色が変わっている壁の範囲は、大体目算で襖二枚分といった大きさで、結構な大きさだ。そのぐらいの大きさの全体に強い衝撃を与えられる攻撃となると、僕の放つ直線的で限定的な斬撃では、少々範囲が狭すぎる。


「真冬くんどうしたのー?」


 壁を壊す手段は知れたものの、手持ちのカードでは対処出来なく悩みに悩んでいると、曲がり角に隠れていたフランさんの呼ぶ声が聞こえてきた。


「壁を壊す方法は分かったのですが、僕ではどうも……」


「その壊す方法って?」


「全体に強い衝撃を与えるみたいなんですけど」


 その方法をフランさんに教えると、フランさんは少し考えた後に、


「……私の魔法ならどうにか」


 フランさんはまるで自分の言葉を反芻するようにそう呟いた後、僕に自信満々にハッキリと言い切る。


「――私に任せて!」


「……でも、どうやるんですか?」


 僕は純粋に疑問に思っていた。


 ここに来るまでに行なった今までの戦闘は、全て僕が担当した。特にこれと言って意味は無いのだが、何故か自分が戦った方が良い気がしていたからだ。


 なのでフランさんの戦闘能力は、未知数。想像も予想もすることが出来ない。


「私の魔法でぶっ飛ばす!」


 いや、前言撤回だ。


 確かに想像も予想もどちらも立てることは出来ないが、この世界に来て様々な事に直面したことによって、危機管理能力が一般の人より数段も備わってしまった。

 それによってその能力が警鐘を騒がしい程までに鳴らし、嫌な予感が汗となって体中から流れ落ちるのを感じる。


「それって——」


“それってどのくらい危ないですか?”と聞こうとしたところ、たちまちフランさんの周囲の魔力が膨れ上がる感覚がした。

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