323話 共に明日を


「ドラゴス! ファラ!」


 私達の窮地に現れたのは、かつて私と肩を並べ戦った二人の仲間だった。


「お前達、どうしてここに……」


「なにやら嫌な胸騒ぎがしたのでな」


「ヴォリンレクスはもう安全だから、みんなを連れて飛んできたの」


 そうか、黒い魔物による被害がなくなった今、二人も自由に動くことができるようになったわけだ。

 それにみんなを連れてきたというのは……。


ドドドドドドォン!


「あれは……セブンスホープの砲撃か」


 離れて待機していたはずなのにどうしてここに。それにあの中にはこれまで私が連れてきた仲間だけでなく。


「オラオラー! あたいが来たからにはもうディーをいじめさせないぞこのデカブツめー!」


「ルイ姉さん、この状況でアタシ達ができることなんてたかが知れてるわ。でも、アタシ達がここにいるだけで彼らに力を与えることができる……そうでしょう」


 新たな仲間との繋がりが私達に活力を戻してくれている。たとえその攻撃が終極神に対して意味がないとしても、その想いが神器を通して私達の事象に力を与えてくれるんだ。


「敵もバカテケェけどこっちの戦艦も負けてねぇぜ! よっしゃもっと撃ち込め撃ち込んでぶっ倒しちまおう!」


「ケント様、この船でできるのはあくまで揺動だけですよ。わたくし達のやれることは微力ですが、精一杯皆さんの力になれるよう努めましょう」


「でも凄いよね、こんな大きな怪物と戦うなんてまさに勇者って感じ!」


「アタシも、まさかケントと出会うまではこんな大舞台の戦いに自分が参加するなんて思いもしてなかったよ。それも、ラフィナと一緒になんてね」


 一人ひとりが思い思いの意思でこの戦いに臨んでいる。誰しもが示し合わせたわけでもなく、ここには運命に導かれるように固い絆で結ばれた、魂の縁者が揃っている。

 それは今の私達にとって何よりも大切な、この世界を繋ぎ止めるための強固な楔となるのだ。


「そうねリネリカ、私もこんなことになるなんて思ってもみなかったわ。こんな……大切な人達と一緒に明日を迎えるために前線に共に立つなんて」


「それでも、誰も後悔なんてしていない。そうだ、俺達は皆自分の意思で後悔しないため今を全力で生きている。そうでしょう、魔導神様」


 リオウの言葉と同時にセブンスホープから四つの幻影が飛び出し終極神へと向かっていく。


「ほほう、まさか生きているうちにまたこの面子で肩を並べられるとはな」


「なんだか昔を思い出すわね」


 それはリオウの『過ぎ去りし英雄譚ファントム・サーガ』によって呼び出された旧時代の神器の使い手達。かつて私が世界神と戦った際の最後のメンバーだった。

 さらに、セブンスホープから飛び出してきたのは幻影だけでなく……。


「カロフ! しっかりして! 大丈夫、私達がついてるから」


「こんなところで力尽きてるようではわたくし達の理想にたどり着くなんて夢のまた夢ですわよ。早く起きなさいな」


「そうだぞ騎士カロフ。こんなことで音を上げていては自分達を相手にすることもできないだろうに」


「……ったく、揃いも揃って励ましだったり激飛ばしてきたりこんなとこで言うことでもねぇこと言って……おちおち寝てもいられねぇじゃねーか!」


 リィナ、アリステル、カトレアの想いがカロフを再び立ち上がらせ、その瞳と神器“リ・ヴァルク”に輝きを蘇らせ。


「レイ、まだまだこんなもんじゃないだろ。見せてやろうよ、アタシとお前の……いや、アタシ達"家族"の想いはあんな奴に負けないってさ」


「ああ……こんなところで倒れていては、姉さんや……ベルフェゴルに笑われるだろうからな」


 サティ……そして過去から託された想いと未来への希望がレイ、そして神器“アーリュスワイズ”に再び力を与えていく。


「レオン、あなたが何も失いたくないようにわたくし達もあなたを失いたくないの。だから、あなたが嫌だと言ってもわたくし達は共に戦いますわよ」


「いつまでも一緒です。もう誰も一人ぼっちじゃない……大切な人といられる世界がここにあるんですから」


「うん……その通りだよ。生きていれば人は誰かと出会える。そして一緒に肩を並べて、今日より素敵な明日へ歩いて行けるんだ」


 エリーゼ、シリカがレオンを支え、腕の中で眠っていた神器“テルスマグニア”も目覚め、周囲に分裂しその数を増やしはじめる。


「せや……さま! どこまでも……ついてく……です!」


「うん! あたしもまだ星夜と一緒に知らない世界を見てみたい! 大丈夫! パパとママも来てくれたんだし、あんな奴ちょちょいのちょいだよ!」


「そうだな、世界中を飛べてもオレ達にはまだまだ知らないことがいくらでもある。見つけにいこう、どこまでも」


 ミーコ、フローラが星夜の背中を押すことで、神器“ムルムスルング”もまたその力を再び魔導機に巡らせていく。それにより、すべての武装が再びその力を取り戻す。


「アポロ、天下の龍帝様がこんなんじゃ国民もガッカリするわよ。それに、一番見せちゃいけない子のためにも、こんな情けない姿は最後にしないと……ね、お父さん」


「ハハハ、これは手厳しいな! だが確かに、我がこんなザマでは龍帝に憧れるすべての者に申し訳ない! 龍皇帝国の者には誰しもが龍帝を目指してもらいたいものだからな……もちろん、我が子にもだ!」


 ミネルヴァ、そしてまだ見ぬ先の世界に待つであろう自分達を求めてくれる者の想いも背負い、アポロの体と神器“エンパイア”に活力が戻っていく。


「ディーオ様、わたくしは信じています。ヴォリンレクス帝国はあなたの手で嘘のない真に強き国として歴史に残ると。そしてその時は、わたくもお傍にいられることを強く願っております」


「当たり前……であろう。余がやらずして誰がやる……。世界よ見るがよい! 余こそがこの世界最大の帝国の主にして、最高最善の皇帝であることをーっ!」


 サロマがディーオの傍らでその雄姿を見続ける、それだけで再び神器“ステュルヴァノフ”も持ち主の勢いに呼応するようにその力を振るっている。


 そして……。


「ま、やっぱりちょっと頼りない主人公にはあたし達みたいな頼れるヒロインが最後まで必要ってことよね」


「あなた一人では足りなくても、わたし達はいつでもあなたを支えます。だから、諦めないで」


 セフィラとクリファが私を支えてくれている……。

 そうだ……たとえ私がアレイステュリムスの力をすべて使えなくとも、私には……私達にはこの世界すべてに繋がるこの絆がある!


「ああ、やるぞ! 私達で……この世界に生きる私達すべてをここに合わせて、終極神を討つ!」


 一人ひとりの想いの繋がりがこの場にいない世界中の人々の想いとも一つとなっていく。

 私一人がアレイステュリムスと同じになれずとも、世界中のすべての想いが一つになればそれはこの世界の力と呼べるものになるはずだ。


「まずは我らで活路を開くぞ!」


 ドラゴスとファラが先陣を切り、反撃してくる終極神の攻撃を一つずつ捌いていく。

 いかに実力者といっても神器を持たないあいつらでは突破は困難だが、リオウの呼んだ幻影達との息の合った連携によって一つひとつ攻撃に対処し、道を開いていく。


「今よみんな! あたし達の開いた道を……!」


 ファラの合図と同時に、己のパートナーと共に英雄メンバー達が飛び出していく。


「いくぜ! その体をぶった切れリ・ヴァルク!」


「切り裂かれた場所にすかさず追撃を入れるのだ! ゆけステュルヴァノフ!」


 カロフが光速で終極神の周囲を回りながらその体を切り裂き、ディーオはその部分をさらに抉り取る。よし、これによって少しずつだが終極神の体が削れていく。

 しかし終極神もそれだけは終わらない。抉り取った肉が意思を持つようにグニグニと蠢き、地上の私達に向かって勢いよく降り注いでくる……だが。


「ワウワウーン!(今っす! 発射っすー!)」


ドドドドドドドドドォン!


 まさに絶好のタイミングでセブンスホープから砲撃が放たれ終極神の肉片を残らず蹴散らしてくれた。

 てかちょっと待て、今号令をかけたってもしかして……。


「号令してんの犬かよ!?」


「ワフワフ(最後までのけ者にされるわけにはいかないっすからね。使い魔の面目躍如っすよ)」


 そんな形で活躍されるとはこっちも思ってなかったが、それにしてもタイミングはバッチリだったので悪くない采配……なんだろうか。

 まぁ助かったんだし結果オーライだ!


「次は俺達だな……セイヤ!」


「ああ、しっかり狙え。オレは放出を止めないからな」


 と、犬に感心している間にも英雄メンバーは次の攻撃に移っていく。サティに背中を支えられながらレイがアーリュスワイズを広げると、そこへ向かって星夜が無数のレーザーや弾丸、ミサイルや爆撃を撃ち込んでいく。

 それら時空を超えて、終極神の四方八方あらゆる方向から飛び出しその体に直撃していく。攻撃が着弾しても星夜は攻撃をやめることなく、レイも常に時空の扉を解放しっぱなしだ。


 神器の攻撃で少しずつではあるが終極神の事象力は確実に削れている。

 私もセフィラとクリファに自分の事象力を安定してもらっていることで終極神の事象操作を完全に抑え込めている。だが、あと一押し……。


「ならば、ここは我の出番だな。レオンよ、手はず通りいけそうか」


「はい、アポロさん。調整はこちらに任せて、思いっきりやっちゃってください!」


 レオンが均等に分けられたテルスマグニアの重力球を円を描くようにグルグルと漂わせている。それはアポロと終極神の正面同士を真っすぐ直線状に位置するように設置されており……。


「うむ、なら遠慮なく……いくぞ!」


 八つの龍の口内からそれぞれ属性の異なる高威力のエネルギーが放出される。本来ならそれらは独立したものでしかないが……それらがテルスマグニアの輪を通り抜けると、バラバラだったそれぞれのエネルギーが一つに圧縮され巨大な一本の力に圧縮され勢いを増して終極神へと向かっていく。


「これなら……いける!」


 これはただ圧縮されただけじゃない、テルスマグニアの事象力も相まってさらに強力な威力となっている!

 その攻撃を前に終極神は両手を突き出して受け止めるが……。


「「「「「「 うおおおおおおお!! 」」」」」」


 その咆哮を受け止めながらも体は切り裂かれ、絶え間ない砲撃がその肉体を削っていく。

 わかる……終極神の事象力が消滅していくのが。これで終わらせる、終極神の事象力が風前の灯となったところへ私が強力な事象力を叩き込めば!


「もう少しだみんな! これで……これで……! 終……」






「『■■※※■■ 終わりだ ■■※※■■』」




















――――――――――

―――――

―――


 ……いったい……何が起こったのか。何もわからない……ただ周囲に広がるのは崩壊した大地と倒れる仲間の姿……。


「あれ……は……」


 そして、宙にはこれまでとは明らかに違う終極神の姿があった。

 先ほどまでの漆黒の姿とは異なり、流れるような純白の文様が全身を覆いつくしている。それに、先ほどよりも体が一回りほど小さく、頭上の紋章はさらに巨大に広がっていた。


 もう一つ気づいたのは……足元には私達が先ほど戦っていたはずの漆黒の終極神がバラバラに転がっていたとうことだ。


(いや、違う。あれは"空洞"だ)


 確かに終極神の姿をしているが中身がスカスカだ。つまり抜け殻……その中から今、天に浮かぶあの存在が現れたのだろう。

 私が消滅していると感じたのは抜け殻の方だったんだ……本体は気づかれないよう中身に事象力を溜め込み、解放した。


「生き……残りは……」


 とにかく希望を失わないためにも私は周囲の事象力を確認する。


「いったぁ……どう……なってんの」


「どうやら、終極神はまだ力を隠していたようですね……」


 セフィラとクリファは無事だ。それにちらほらと他の仲間の事象力の活動も感じられる。なんとか全員無事みたいだ。

 だが……。


「ワグゥ……(セブンスホープも転倒して動けないっすよー……)」


「俺の幻影も今の一撃ですべて消されてしまった……」


 どこもかしこも満身創痍だ。それに加えて終極神は新たな姿へとその身を変えた。

 今までの禍々しい雰囲気だけじゃない。今までとは違うまた別の……。


「白と黒……そうです、あれこそわたしやセフィラを生み出したのと同じ本当の姿……」


 そう、ただ消滅させて食らうだけのこれまでとは違い、"生み出して終わらせる"力。

 あれの前では、もうただの力と力のぶつかり合いでは止めることができない。


「『■■※※■■ 天球 ■■※※■■』」


 "声"が世界に響く。それと同時に終極神の頭上の紋章から黒い球体が出現し、ゆっくりと地上へと降下していく。

 あれはダメだ。あれは世界を食らう意思を持つ事象エネルギー……あれが世界に落ちればその瞬間すべての事象を飲み込んでしまう。


「くっ……そ!」


 体が……思うように動かない。実態がないのに鎖が重く感じる。

 事象力で押さえつけられているんだ。あれを受け止められるのは事象力を操れる者だけなのに……神器を持つ者もみんな倒れてしまっている。


「私が……やらなくては!」


 唯一わずかにでも動ける私があれを止めるんだ! それが前世から続く私の使命……。




「まったく……まだそんな使命感やらなんやらに囚われているのか、インフィニティよ」


「そうだよ、インくんはもう一度死んじゃって、新しい自分に生まれ変わったのにね」




「え?」


 私は……信じられないものを見た。ここにいる誰もが、それこそ神器を持つ者や事象力を扱う私でさえも終極神の事象の圧に押さえつけられているというのに。

 ドラゴスとファラは……私の前世の親友達は何食わぬ顔でこの場に立っていた。


「どう……して?」


「お前が驚くのも無理はないだろうが、これは世界神の力だ」


「ここに来る前にね、世界樹を通じて世界神にお願いしたの。もしもの時はあたし達にその力を貸して……って」


 よく見れば、二人の体はアレイステュリムスの事象の象徴である青白い光に包まれていた。世界神の力を借りた……それは本当なのだろう。

 だが、ならばなぜ今までそれを使わず今になって……まさか。


「お前達! まさか……バカなことを考えてないだろうな!」


「……本当に、どうしてお前はこんなところはよく気づくのだろうな」


「でも、それがあたし達の大好きだったインくんだからしょうがないよね」


「……!」


 そのセリフと表情で……二人が何をしようとしているのかを理解してしまった。

 いくら事象の管理者たるアレイステュリムスの力を借りたからといって本来二人の肉体はそれを扱うに適した体ではない。

 そんな体で終極神の生み出した事象力を相手にすれば……。


「やめろ! どうしてお前らがそんなことをする必要がある! これは私がやるべき……」


「そうではないだろうムゲン・・・よ! お前が戦うのは、前世から続く宿命でも、義務でもない! そんなものを背負うのは、これまで生き続けた我らだけでよい」


「そう、あなたはムゲン・・・くん。だからあなたは、あなた自身の進む道を選ばなきゃ」


 二人の姿が……遠ざかっていく。ゆっくりと、その力に導かれるように……今にも地面に接触しそうな黒球へと向かって……。


「待て! 待ってくれ! フローラはどうするんだ! お前らだってこれからせっかく家族として暮らしていけるのに……」


「ああ、あの子には……本当にすまないと思っている。最後にファラとあの子と過ごせた時間は……我にとって何にも代えがたいものだった」


「あたし達は長く生きすぎちゃったの。そのせいでこの世界にも……あの子にもよくない影響を残しちゃった。でも勘違いしないで、これが……あたし達の本当にやりたいことだから」


「やめろ……やめろおおおおおおおおお!!」


 ドラゴスとファラはそのまま黒球を下から押し上げ、同時にその事象力を消滅させていく。

 ……だがそれは同時に二人の肉体をも徐々に消滅させていくこととなり。


「パパ! ママ! どうして! せっかくみんな一緒になれたのに……どうしてまた置いてっちゃうの! これからはずっと……ずっと一緒だって言ったのに!」


 フローラも二人の覚悟を悟り悲痛な叫びを響かせる。その瞳からあふれ出る大粒の涙は残酷な現実を受け入れたくない悲しみを表していて……。


「フローラ……大丈夫、ママもパパもあなたといつも一緒だから」


「ふぐ……うぐ……そんなの嘘だもん……」


「嘘ではないさフローラ。我もファラも、フローラの胸の中にいる。いつまでもお前の思い出の中で生き続ける。そのために! 我は今ここにいるのだから!」


「パ……パ……うう、うえええええええええん!」


 二人の体が……光となって天に昇っていく。ドラゴスとファラの命は今尽きた……命を賭してこの世界を守ったのだ。


「『■■※※■■ 天球 ■■※※■■』」


「そん……な……」


「消えたばっかなのに、もう一回あれが来るなんて……」


 あいつらは言った……前世に囚われるなと。私はこの世界に再び戻ってきた時に、私の意思で世界を守ると誓った。

 だがそれは……本当に"ムゲン"としてだけ言ったことばだろうか。


 今……わかった気がする。今ここにいる"私"とは何者なのかを。


―――バリン―――バギン――バキン―――


「私は……ムゲンだ!」


バリン―――バリン!―――バキ――――――バギャアン!


[今ここにすべての試練は終えられた]


 すべての鎖が崩壊し、アレイステュリムス本来の事象力が流れてくる。

 そしてそれを操るのは私だ……私という存在が扱うからこそこの力は本当の力を発揮できるんだ。


「ドラゴス……ファラ……ありがとう。もう、私は迷わない!」


 私の体から湧き上がる事象力が仲間達の下へと送られていく。


「こいつ……は!」


「感じるぞ、俺達の中に眠る本当の力が」


 本当の事象の管理者となった私は神器本来の力を引き出すと同時に、その所有者へと完全な同調を可能とした。

 仲間達が私の下へと集まってくる。私から放出される虹色の六翼にそれぞれ導かれるようにそれぞれがその場に収まると、仲間達の……英雄達の姿が変わっていく。


「感じます。師匠から送られてくる事象が、僕達と神器を一つにしてくれるのを」


「ああ、それに……これは力だけじゃない。事象の中に眠る想いも一緒にだ。わかるかフローラ」


「うう……え? この……暖かさ、ママなの? パパも……うん、うん! ずっと、一緒なんだね……」


 死者は世界の事象へと還り、また円環していく。その者達の想いと一緒に。

 そうだ、ドラゴス達の言ったことは間違いじゃない。その想いはこの先も……私達から繋がっていくんだ!


「ドラゴス殿の力が我の中に入ってくるのを感じる。うむ、そうだ! 我らは共にここにある!」


「なんだか……すごいのだ!? 余らの力だけでなくたくさんの意思が力になってくれておるぞーっ!」


 アポロの体からあふれ出るエネルギーが黄金の龍の首へと変化していく。それだけじゃない……この世界を守りたいというすべての想いが英雄達の体へと力を与えていく。


 そう、私達を黄金の武装へと変化した神器を纏う『英雄神』へと!!


「『■■※※■■ !! ■■※※■■』」


 私達の力が、事象力が、終極神の天球を消し去っていく。

 この状態の終極神を"倒す"ことはできない。だから私がやるべきことは……。


「セカ! 私の下へこい!」


 その存在をこの場へと呼び出す。世界樹に残されていた……ファラが守ってくれていた逆転のための一手を。


『お前はフローラちゃんを泣かせた……絶対に、絶対に許さないぞ!』


 だがこれだけでは足りない。

 しかし最後の1ピースは……すでに私の手の中にある!


「ベルゼブル、お前のやり方……使わせてもらうぞ!」


 ケルケイオンにセットされたスマホの画面を操作し、あの時撮影した最後の一枚……ベルゼブルの姿を映し出す!


「『■■※※■■ まさ……か ■■※※■■』」


「覚悟しろ終極神……これが、お前を討つための最後の一手だ!」


 ベルゼブルの事象力を乗せセカを終極神へと撃ちだしていく。

 二つの事象力が衝突した時、それらは混ざり合い新たな世界への扉が開かれる!




「『神域創生リ・クリエイション』!!」




 終極神の体は完全のその動きを止め、中心に白い渦が現れはじめた。これから、私達はあの中へと飛び込んでいく。

 セブンスホープもすでに態勢を立て直し、新たな力を得たレオンによって遠隔で操作されている。倒れていた仲間も私の力で機内に移動させて準備万端だ。これで……。


「これが……本当に最後ね!」


「行きましょう、わたし達の目指す"先"へ」


 私の傍らにはセフィラとクリファがいる。世界を救うのは……やっぱり主人公とヒロインが一緒じゃないとな!


「さぁいくぞ! この先が……私達の向かう最後の戦いの地だ!」






第12章 救世と終極の最終決戦 編   -完-





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る