後編

#1 スタート・ミー・アップ

「おかあさん」


「――何よ」


「このマフラーのいろ、しってる?」


「赤色でしょう。他に何があるの」


「これはね、ゼラニウム。わたしの友達がくれた、『友情』のいろ……」


「……」


「おかあさんの服のいろと、おそろいだね」


「――知らないわ、そんなの」



「ぐ……ッ!」


 喧騒と爆炎の中、チヨは防戦を強いられる。ストリートの狭間の路地で、カタナを翻しながら後退する。その前方……轟音とともに煙が立ち込め、コンクリートが砕かれる。


 その奥から、出現する。


「KRRRRRRRRRRRRRRRRRRR…………」


 奇妙な軽い音の連なり……鳴き声。それを響かせながら、今チヨが戦っているアウトレイスが現れる。


 全身を極彩色の甲冑で覆った、奇妙な姿の男。その両腕は異常に肥大化し、シリンダーのような奇妙な機構を備えていた。


「貴様……一体」


 チヨの周囲のあちらこちらに、クレーターのような陥没が形成されていた。そこからは煙が立ち上る。目の前の存在は甲冑を揺らしながら歩み寄ってくる。


「蟹か……? それなら横歩きしか出来んだろうに。お前は何者だ」


「KRRRRRRRRR…………」


 目の前の男は……その腕を引き絞り、放った。

 チヨは咄嗟にカタナを構えるが――。



 次の瞬間、彼女は両手が焼けただれるような『熱気』を感じ……衝撃波を受けて後方へ吹き飛ばされる。


 やむなく空中で身を捻り、枯れ枝のように着地する。そのまま前方をにらみつける。すでに、この『状況』と戦い始めてから長い時間が経っていた。撃退したアウトレイスの数も、一体どれほどになるやら。


 血と埃にまみれながら、前方を見やる。

 甲冑男は……両手からぷすぷすと焦げ臭い匂いと音を放ちながら近づいてくる。


 チヨは知らない――蝦蛄しゃこという生物の存在を。


「ひいいいいいいいい!!!!」


 そしてそんな彼女の傍らを駆け巡りながら逃げ惑う女ひとり。


「GRRRRRRRRRR!!!!!!!!」


 その後方を、これまた正気をなくしたアウトレイス達が追いかけてくる。

 半泣きになりながら追いかけられているのはキムで、彼女はただただ逃げているだけだった。


「たわけがキム、戦わんか……!!」


 思わず声を掛ける。


「無茶言わんでくださいよォ!! あたしの力が直接戦闘に向いてないことはチヨさんだって知ってるっしょ!? あああーもう来ないでえええええ!!!!」


 チヨは思わず舌打ちしながら、キムの無事をやけくそ気味に祈る。

 それから荒く息をつきながら――前方の敵を見る。



 全ては……『彼女』が奪い去られた瞬間から始まった。


 あの時、叫ぶ思いとともに予想もしない力を発揮した少女は、何も出来ないまま、なんでもないような男に連れ去られた。キムもチヨも、それを見ていることしか出来なかった。


 チヨとしては自分の未熟を第一に呪った。

 そしてその次に――……あの少女の未熟さを叱咤した。


 仮にそれが、自分やミランダの発言からくる心の動揺によるものだとしても。チヨとしては納得がいかなかった。納得など、するはずもなかった。彼女にとって一番大切なのは、筋を通すことだ。信念を、貫くことだ。


 だからこそ……チヨは悔しかった。今すぐあの少女のところに言って、切っ先を突きつけながら追求するべきだと思った。


 ――『なぜ、あそこまでの思いを力に出来たはずのお前が、あの程度の揺さぶりで力を発揮できないようになるのか』と。


 無論、それがかなわないだけの何かが彼女の中にあるのは百も承知。だがそれでも、チヨの中にあるものがそれを許さない……。


 ――再び、衝撃波が遅い来る。チヨは受け止めきれなかった。

 壁に叩きつけられて、口から胃液を吐き出す。


 咳き込む彼女に、奴が迫る、迫る――。

 心は屈しない。あの少女へのいらだちとともに、戦意を再充填しながら顔を上げる。カタナを構える。


「KRRRRRRRRRRR……」


 そして再び、蝦蛄男の一撃が迫りくる――。



 よもやこれまでと思われた次の瞬間、銃撃音がチヨの眼前に殺到し、猛烈な火線がばら撒かれた。その火花が彼女の周囲に散る。


 そして目の前で……蝦蛄男は体中から白煙をちらしながら、ゆっくりと倒れる――。


 ……チヨは振り返る。

 その光条の放たれたポイントを。


「第八ともあろうものが、随分と情けねぇなぁ」


「特注の徹甲弾だ。甲殻野郎によく効くぜ――生きてるか? まぁ死んじゃいねぇか」


 ……荒々しい男たちの、無遠慮な声が聞こえてくる。


 蝦蛄男は完全に倒れ伏す。チヨはよろめきながら立ち上がる……声の方を睨む。


 近づいてくる男たち。

 銃で武装した、大柄のならず者たち。

 ――その身体に防弾ジャケットがなければ、この機に便乗して暴れまわるギャングにしか見えないところだっただろう。

 片方がガムを噛み、もうひとりが葉巻を吸っている。


 その男たちが、よろめく蝦蛄男の方を見る。

 ……薄墨色の液体を身体から流す。だが生きている。死んではいない。


「あの程度。万全ならばし損じることはない。徹甲弾がどうした……」


 精一杯の悪態を彼らにぶつけてみる。だが男たちは肩をすくめて笑っただけだった。


「……相変わらず。瀕死にする技術にかけては……天才的だな」



「無理すんな。隊長からの命令でな、お前らと一緒に戦うことになった。感謝しろ、死にかけだろサムライガール」


「たわけが……この程度造作もないと言っているだろう」


「糖分は?」


「……――寄越せ」


「悪いな。ガムはこれだけだ。俺とキスして取ってみるか?」


「――……たわけが」


「じゃあそういうこった。援護するぜ、第八」


 あらっぽい男たちはからからと快活に笑い、銃を構えながらほうぼうへ。チヨをカバーするように。そして、どこかで逃げ惑っているキムを守るかのように。


「……――」


 チヨは蝦蛄男を見た。

 それから、懐から何らかの丸薬のようなものを取り出して投げつける。


 彼女は駆けていく。

 ――街の、通りに出る。

 台地になった場所に、白い平板な住宅が立ち並ぶ。

 ……いつの間にか、クラウンヒル・アベニューにまで来ていたらしい。全く嫌になる。


 更に嫌になるのは。

 ……ダウンタウンから僅かに離れているのに、その場所と同じような情景が目の前に広がっていることだ。ディプスの奴は、そして一瞬だけ視認できた今回の首謀者は、ここまで被害を押し広げたということなのだ。


 悲鳴を上げながら、坂の道を逃げていく人々。その過程で転倒し、倒れた露店からは大量のグレープフルーツが転がり、潰れ、周囲に酸っぱい匂いを撒き散らす。


 その後方から迫るのは、奇妙な姿の者達の狂ったサーカス。先頭を走るのはロバの頭を持った男。その下半身を屈強な茶色に変化させ、白目を剥いてよだれを垂らしながら逃げていく者達を追いかける――唸り声を上げて。


 さらにその近くではプレス機のようなものを両手に備えた男が地面を圧殺させ震撼させながら進んでいる。そのたびにアスファルトがひび割れていく。その中に細かな破片が呑まれていく。


 空を飛ぶのは巨大な羽虫のモロウで、その横をふわふわと彷徨いながら進撃するのは、発光して自我を失ったフェアリルだ。彼は手近なものを捕まえると、その者の口の中に『声』を流し込む――……すると、被害にあった者は……白目を剥き、自らの化物としての姿を顕にする。


 髪の毛がソースコードのように伸び、地面に展開され……逃亡する者達を引き倒し、引きずり込んでくる。更に、化物の集団が増えていく、そしてまた、次の贄が。


 爆発、悲鳴、煙。サイレン。


 ……全ては目の前で展開されている光景だった。それはどんなカリカチュアでもなければ抽象画でもない。実際に起きていること。


 あまりにもおぞましく、だが同時にあまりにも滑稽な光景。……少し視線を外したら、土埃の中で倒れ伏し、『夢と理想の地――移住はクラウンヒル・アベニューへ!』という古びた看板の破片の中で動かなくなっている者の姿が見える。


 よくあることだ。この街では。

 ――今日がたまたま、いつもより激しいお祭り騒ぎというだけで。



 ――もし。

 チヨは考える。


 ――もし彼女が、シャーロット・アーチャーが、最後まで心が折られたままなら。

 ――あるいは。そちらのほうが幸せかもしれない。


 何故ならば。


「儂もそうだ、キムもそうだ……このモノノケどもの列の中に居る」


 ――所詮自分のひだまりに……“まともな”人間は居られないのだから。



 そしてチヨは……数秒間、音のない世界で目を瞑り、沈思する。


 ――再び目を開けた時には、彼女は修羅となり……その騒ぎの列へと加わっていった。


 血に塗れた、ずっと前から血に塗れた己のカタナを携えて。

 わけの分からぬ失望と諦観を一緒に抱え込んだまま。



 キーラ・アストンの運転するダッジ・チャージャーは、混乱を極めるダウンタウンのストリートを爆走していた。


 その車体は一路、オデールのアジトのある場所、LA沿岸部のプラヤ・デル・レイへ。


「くそッ――」


 車窓からは絶えずその情景が流れていく。追うもの追われるもの。その破壊。

 まるでゾンビ映画のパンデミックだ――到るところで爆発が起きて、ビルが黒煙に包まれる。その音が、ガラスを通してビリビリと伝わってくる。


 キーラは逃げていく人々の合間を縫って車を走らさなければならなかった。無論警官たるもの轢いていくわけにはいかない。彼女のいらだちは募るばかり。


 愛煙のブラックデビル・カフェバニラも切れつつある。カーステレオから流すべき音楽にも適切なものは見つからない。イライラする。あぁ畜生め。ディプスの野郎め。そして、あのオデールの奴め。あいつにはキツいお灸を据えてやる必要がある……とびっきりの。


 彼女は歯噛みしながらハンドルを回す。タイヤが軋みを上げて火花を散らし、路面を滑っていく。


 彼女はすでに、第八がこの現状に対して加勢に加わった事実を知っていた。だが、それをすんなりと納得できるほど、彼女は奴らの存在に対して腑に落ちているわけではない。


「バカ野郎が……!」


 それを形容する、うまい言葉も見つからない。

 いつしか彼女の怒りは過去の情景へと飛んでいた。



 彼女が警察に入ったのは、この世界への怒りと、抑えきれない正義への衝動からだった。気に入らない奴らをぶん殴って、弱い奴らをこの手で守る。そんな世界であってほしかった。


 だが、拳だけでそれをやる無頼は、この世界では単なる無法者でしかないことをよく知っていた。彼女の家は名家だった。知識と経験を吸収するには十分な下地があった。


 ゆえに彼女は、その義憤と正義の心をどこに仮託すべきかを知っていた。


 ――それは秩序だ。この街を統御し、ひとつにまとめ上げる、まるで数式のような秩序だ。

 それは大勢の人間を守ることにつながるが、そこからはみ出す人間を怒りへと駆り立てる。


 だが、無いよりはマシだ。秩序なき正義など、法律なき裁きなど、単なる原始時代の衝動に過ぎない。キーラ・アストンはそう考えるようになり……警察に入った。


 そして今も、その考えに基づいて戦っている。


 無論、警察の内部で気に入らないことがあればそいつには逆らう。だが彼女は警察というものを心の底から愛していたし、離れられなかった。これまでもそうだし、これからもそうだった。


 ――だが。


「こんなにッ……こんなに舐められてんのかッ…………!!!!」


 時として。

 警察官としての在り方は、たまらなく不自由である時がある。

 否が応でも、そう感じてしまう時がある。


 いつかと聞かれれば、それは今なのかもしれない。

 しかし、彼女はそれでもなお、思わずにはいられない。


 ――これは、オレが、オレ自身で決着をつけなきゃならないことだ。

 なぜなら。第八機関も、守るべき市民に含まれているからだ。


「他に理由なんていらねぇ、待ってろよひよっこ……オレがそいつを示してやる――」


 と、そこで。 


「ッ!!!!」


 突如として、気に入らない思考は破られる。

 混沌とした情景のさなか、目の前の歩道を駆け足で走っていく少女を見たからだ。


 ――その瞬間彼女と目が合った。

 彼女は、キーラを見ていた。しっかりと。


 ……咄嗟にハンドルを回して車体をドリフトさせながら、急ブレーキをかけた。ナイトライダーもかくやと言わんばかりの業だ。キュルキュルという激しい音とともに、アスファルトに半月状の轍が刻まれる。


 ……数秒後。

 煙草を灰皿に押し付けて運転席から降り立ち、目の前に居る少女のもとへ。


 ――怒鳴り込む。


「馬鹿がッ、何考えてやがる! 轢かれちまうぞッ!!!」


 目の前の少女はまったくもって無事だった――。 

 とはいえ、その容姿を見てキーラは一瞬立ち止まる。


 ボサボサの髪、みすぼらしい服装。

 ――この町ではありふれている。あまりにも。


 だからキーラは彼女に対して少し身をかがめて聞く。


「おい。怪我ねぇかよ」


「――あのッ!!」


 それ以上の言葉を続ける前に、少女は食いかかるようにしてキーラに言った。面食らって返事ができない。少女はそのまままくし立てる。


「あのっ、警察の人、ですよねっ……だったら、わたしを助けたひとのこと、知ってるかもしれないっ――」


「助けた!? 何の話だ――」


 キーラは少女をかばうようにして、自然に車の陰へ寄せた。少女と自分の会話など関係なく、周囲では人々が逃げ惑い、それに対して化物が追いかける、建物が爆発する、地面が噴き上がる――それらが起き続けている。


「わたし、車につれていかれそうになったんです、でもそれを……女の人が、助けてくれた! 赤いマフラーの……」


 ……。

 

「……――!!」


 ……そんなことが。

 そんな偶然があるというのか。


 にわかには信じがたいが、しかし、何故か確信は天啓のように降ってきていた。キーラはそれをごく自然に享受していた。



 ……間違いない。この少女は、シャーロット・アーチャーの話をしている。



「……その、お前……いや、君を連れていこうとした奴ら、どんな顔だった」


「黒人の……大きな男と……女の人……それからもうひとり……誰かいたような気がするけど、思い出せない……」


「――…………っっっ」


 それだけで十分だ。

 あまりにも十分すぎる。



 シャーロット・アーチャーは、この少女をかばい、オデールに連れて行かれたのだ。



「……なんでッ、力を使わなかったっ……お前もアウトレイスじゃねぇのかッ……」


 一人で吐き捨てた言葉は少女には聞こえない。改めて向き直って、そっと彼女に目線を合わせる。それから聞く。


「なぁ。……オレを探していたようなそぶりを見せたが。どうかしたのか」


「っ……あの、わたし」


 少女は言葉を切る。気持ちが高ぶって、まともに話せない状況らしい。


「落ち着け。オレが居る、大丈夫だ。ゆっくりオレの目を見つめろ……そうだ、それでゆっくり深呼吸しろ……そうだ……」


 やがて、少女は落ち着きを取り戻した。

 もっとも、キーラの心の中は動揺していたが。


「……あの。わたし、伝えてほしいんです」


「何を……誰にだ」


「わたしを助けてくれた、あの女の人に……」


「一体、何を――」



「助けてくれてありがとう。って……ただ、それだけを言いたくって」



「…………――――ッッッッ!!!!!!!!」


 キーラはとたんに、頭の中から動揺がかき消えて、心の中すべてが、警察に入ってからコレまでで得たものすべてで覆われた……そして、この街のすべてが愛おしくなり、目の前の少女を衝動のままに抱きしめた。


「っ!!??」


「それだけのために……そんなボロボロんなって……畜生め、馬鹿な子だ、ほんとに馬鹿な子だ……――」


 ――嗚呼。涙さえ出てきそうだ。こんなにもか弱くて、こんなにもひたむきで、こんなにも……こんなにも……。


「…………――――」


 そしてその瞬間、キーラの中で、シャーロット・アーチャーに対する評価が何もかも変わった。


 そうだ。

 あいつも、守るべき市民の一人なら。

 あいつも、あいつも――。


「畜生、泣かせるじゃねぇか、あのひよっこっ…………!!!!」


「お姉ちゃん……??」


「あぁなんでもねぇ、なんでもねぇよ。すまねぇ、痛かったか?」


 抱擁を解き、その髪を優しく撫でる。


「……教えてくれて、ありがとな。絶対に、伝えてやるから」


 限りなく、優しさに溢れた声で。

 少女に、伝えた。


「ちょっと待ってな」


 キーラはスマートフォンのとある番号を呼び出す。


『もしもし隊長、今戦闘中だ、一体何の用で――』


「詳しくは後だ、お前今から三十秒以内にボンドストリートに来い。分かったな」


『ちょっ、隊長、あまりにも急で――』


「良いから来い。じゃなきゃお前のポルノ趣味バラすぞ」


『そんなっ、というかその言い方してるってことはあんたは知って――』


 切った。


 ――それから、きっかり三十秒後。

 LAPDのセダンが路地に滑り込み、激しくドリフトしながらキーラたちの前で停車する。


 そこから、余裕のまるでない顔をした大男の部下が降りてくる。彼は開口一番に問う。


「隊長、もしかして俺のロッカー勝手に――」


「いいか。お前に大事な仕事をやる。この子のことを調べて、両親のところへ……安全なところまで連れて行け。分かったな」


 キーラは少女の背中を優しく押しながら、部下の前へ。彼は戸惑いを隠せない。


「ちょっと隊長、何を――」


「いいからやれって言ってんだッ!!!! てめぇのお気に入りがたっぷり詰まったUSBメモリでケツ穴浣腸すんぞ!!!!」


「っっっっ、イエス!!!! マムッ!!!!!!!!!!!!!」


 キーラの怒声に、男は背伸びをして叫び返す。それから、戸惑う少女を車の中へ誘う……そこは彼女の部下だ、洗練された動きである。


 ……車に乗る時、少女はキーラの方を見た。


 キーラは彼女に笑いかけ、小さくウインクをよこした。


 間もなくパトロールカーは去っていき、彼女もまたダッジ・チャージャーに乗り込み、その場を後にする。


 ……それからはもう、何一つ躊躇うことはない。

 キーラは路面を爆走しながら、目指すべき場所へ一直線に進んでいた。


 彼女の心を突き動かすものがあった。それに従うだけのことだった。


 ハイウェイに乗り上げる。

 ……周囲の風景が高速で流れていく。


 急げ、急げ。時間が経てば経つほどに、被害は広がっていく。

 だが彼女は後ろを振り向くことはないし、焦ることもない。


 気づけば、その口はほころび、まるで詩を吟じるかのように……言葉がほとばしり出た。


「お前、そこまで度胸あんならよ!! あのときも言い返せば良かったんだ、ほんとに第八のバカ野郎どもがッ!!!!」


 キーラは更にアクセルを踏み込んで、愛車を加速させた――。

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