傀儡魔導師と助手

朱鳥 蒼樹

第0話:プロローグ



私の名前はミィ。アスリア帝国北西に位置する水上都市マーコムの生まれで18歳。ちなみに女の子。


私の住んでいる地域は18歳で成人、仕事をしなきゃいけないんだけど、私はすごーく不器用でお父さんの仕事もお母さんの仕事も継げないの。


あ、私のお父さんは水上都市の生活に不可欠なゴンドラを作る職人さんよ、お母さんはそのゴンドラの彫刻担当。憧れはあるけど、もう諦めたわ。だって、私の不器用さで二人の名前に泥塗りたくないし。


今はゴンドラの船頭しながらある仕事をしているの。

えーっと、なんて言うの、助手?すっごーく偏屈で引きこもりな人のお手伝いを少しね。


でも、その人、何も教えてくれなくて。未だに本名すら知らないわ。名前なくて不便だって言ったら、《ロコ》とでも呼べ、ってぶっきらぼうに……。


前置き長くなっちゃったけど、私はまあ楽しく過ごしてます。








マーコムに流れ込む河はライヤン密林と呼ばれるマングローブを経たものである。澄んだ水と青々と茂る木々、豊かな自然に守られた密林には様々な生の営みが見られた。


また、土壌もよい。不純物が少ないため水辺から少し離れた箇所では適度な水分を含んだ質のよい粘土が採れる。しかし、そこまで至るにはかなり旅慣れた者でなくば難しいため、時折旅人が採取しては都心部で高値の取引をしていた。


自然は豊かだ、とはいえ人間が住む場所としてはあまりよい環境ではない。一番近い街マーコムに出るにも船は必須である上、食物を獲ることも難しい。狩猟生活をしたとしても人一人生きるのがやっとのぐらいしか獲物を獲ることはできまい。


だが、だからこそ、《彼》にとっては格好の隠れ家となった。





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