プロット:コンクリート管の中を通り抜けていた頃

artoday

第1話 コンクリート管の中を通り抜けていた頃

小学校の脇の水道工事のためか、直径40cm位の長いコンクリート製の円管が積んであった。

ぼくは、友だちのけんちゃんと途中まで、入っていって、

今、どの辺にいるのか、わからなくなり、

後にも、先にも行けなくなり、疲れきってしまった。

それに、息ができない。

C「もうすぐ、お正月なのに、もう、これで、死んじゃうのかぁ」

K「はぁはぁ」



それから、しばらくして、コンクリートの管の中で後ろにいた、

けんちゃんが、

K「おいらにも、とうちゃんがいる」

と言い出した。

けんちゃんから、とうちゃんの話を聞いたのは初めてだった。


けんちゃんは、茅葺きの農家の奥のわらが、積んである部屋にかあちゃんと、幼い妹と3人で住んでいたのだが、 最近、映画館の裏のアパートに引っ越した。

そのかあちゃんは、最近はとてもお化粧をして、2人にコーラをくれたこともあった。ただ、初めて飲んだコーラは苦かった。


木造2階建アパートの1Fの部屋がそうだが、そこに、今日は、とうちゃんが来ていると言う。

C「けんちゃん、前に進むぞ、後戻りはできないよ」

やっとの思いで、コンクリートの管から、抜け出した。

それから、

早速、けんちゃんのとうちゃんを、2人で見に行くことになった。

けんちゃんに、嬉しそうだった。

けんちゃんの肩車で、そっと、窓の隙間から、中を見ると・・・


けんちゃんのかあちゃんが、殴られていた。

それも、何度もだ。

顔が腫れていた。


ぼくは、肩ぐるましてるけんちゃんに、なんて言っていいのか、

考えてあぐねて、しまっていたら、

K「ねっ」

とけんちゃんが、言って、交代したがすぐ降りるという仕草をした。

気まずかったんだろう。


その頃、

けんちゃんは、近くの映画館のガラスのショーケースに入っていたブロマイド写真を交換の時をいつまでも待って映画館の係りの人にもらっていた。


K「あの、あのねえ、ちいちゃん、ウルトラマンのブロマイド写真をあげるよ」

 と言うと、 ボクを映画館の方にさそった。

C「けんちゃん、ウルトラマンはいいよぉ」

K「ちいちゃん、、、なんでよ。」

C「やっぱ、おいらはさぁ~仮面ライダーほうが、すきだしな。それは大事にしておけよ」

K「こんど、ぜったい、それ、もらっとくから。そしたら・・」

C「それより、おいら、ね。しみつ警察つくたんだけど、みんなにないしょにすればぁ、 入れてあげるよぉ」

K「ほんと」

けんちゃんの顔に笑顔が戻ったので

少しホッとした。

でも、

小学生時代の、けんちゃんは、なんだか、さびしそうだった。



中卒での就職は、金の卵と言われた時代、

けんちゃんは、川崎の工場に勤めた。

それから、、しばらくして、

カワサキの2輪車の乗って仕事に出かける後ろ姿は、頼もしいようであり、また、成り行きに、いたたまれなく寂しくようにも見えた。


どうあぐねても、不幸を背負った時間の動きは止まらない。

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