とかげくん【ちょっと欲張り】
遠くの空を見つめるすいりゅうさんの目が少しだけ
ぼくは「どうしたの?」って訊きたかったんだけど、なんだか訊き
毎日お天気で嬉しいね。真っ青な空はずっと遠くの方まで澄み渡っていて、とっても気持ちがいいね。山の向こうからもくもくと盛り上がった雲はおいしそうで、お腹がぐうって鳴っちゃうね。
思ったことをそのまま伝えると、すいりゅうさんは面白そうに目を細める。次に目を開けたときには、あの表情は消えていた。
それからぼくは、昨日すいりゅうさんにさよならしてからのことをいろいろお話しした。
晩ごはんのこと。お手伝いのこと。
夕べはお空の星がまるで川みたいに見えて、すいりゅうさんを思い出したこと。
歯みがきをさぼってそのまま寝ようとしたら、おばさんに見つかって叱られちゃったこと。どうしておばさんは分かっちゃったのかな。もしかして、魔法が使えるのかな?
今朝、屋根に上ってペンキを塗り直したこと。すいりゅうさんとの特訓のお陰で、屋根の上でもへっちゃらだったこと。
そういえば、すいりゅうさんは夜は何をしているんだろう。
ひとりぼっちで寂しくないのかな? ぼくの他にもお友達がいるのかな?
うーん。急に気になりだしちゃった。今度こっそり覗きに来てみようかな。ああ、でもそれじゃあ何だかストーカーみたいじゃない? それはイヤだなぁ。
それなら堂々と会いに来ようか。すいりゅうさんと一緒に星空を眺められたら素敵だね。松の木の天辺から見るお星さまは、どんな感じだろう。もしかして、背伸びしたら届いちゃったりするのかな? それとも、もっともっと高い所にあるのかな?
すいりゅうさんは、どのくらい高く飛べるんだろう。お星さまに届くほど高く昇ったことはあるのかな。雲の上って、どんな感じ? おひさまに近づくから暖かいのかな。それとも、高いところだから寒いのかな。松の木の天辺は、地面よりちょっと寒いよ。
夜通しお話ししたら、今よりもっとすいりゅうさんと仲良しになれるかな。夜の月明かりやお星さまの煌めきを映したすいりゅうさんは、きっときれいだろうなぁ。
ああ、断然夜に会いに来たくなっちゃった。
キャンプだね! 大人と一緒じゃなきゃダメって言われてるけど、すいりゅうさんは大人だから大丈夫だよね。
でもそうすると、すいりゅうさんのことをおばさんに話さなきゃいけなくなるね。おばさん、びっくりするかなぁ。
ぼくがしばらく黙っていると、すいりゅうさんが心配そうに目をくるんと動かした。
ふふ。大丈夫だよ。すいりゅうさんは優しいね。
ぼくはすいりゅうさんの耳にぎゅうっと抱きついた。
ねえすいりゅうさん。
大好き。
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