とかげくん【ひとりぼっち】
すいりゅうさんは水神様なんだって。
ずっと内緒にしてたけど、すいりゅうさんと会ってることを思いきっておばさんに打ち明けたら、そのときに教えてもらった。おばさんはすごくびっくりしてたよ。
神様なんだって。すごいひとなんだって。畏れ多いって。
神様かぁ。何だか納得。だって、すいりゅうさんはすごく特別な気がしてたもの。
ぼくはこれまでのことを正直に話して、すいりゅうさんが神様でもこれまで通り会いに行きたいってお願いした。おばさんは渋い顔をしてたけど、この頃ぼくが頑張っているのをちゃんと見ててくれたから。だから、最後には許してくれたよ。絶っっ対、すいりゅうさんに迷惑をかけないようにって約束させられたけどね。
でも、おばさんに言われなくたってそんなことしないよ。大好きなひとを困らせるようなこと、する訳ないじゃない。ねえ?
残念ながら、キャンプのお許しは出なかったよ。
これ以上すいりゅうさんに迷惑をかけちゃダメだって。まだ早いって。
迷惑は分かるんだけど、まだ早いってどういうことだろう?
でも。
これで晴れておばさん公認!
ぼくはスキップしながらすいりゅうさんに会いに行った。
🍃🍃🍃
こんなこと、初めてだよ。
ぼくは松の木を見上げた。
夏の強い日射しに照らされて、青い葉が少し辛そうだ。
丘の上に立つ松の木は、とても大きくて、立派で。だけどいつも寂しそうだった。すいりゅうさんが来るまで。
……。
…………。
寂しそうだよ。
ぽつんと松の木が立っている。
独りっきりで。
すいりゅうさーん。
どこに行っちゃったのー?
🍃
お散歩かなあ? それとも、お買い物かなあ?
すいりゅうさんは帰って来ない。
おひさまは天辺から少し傾いて、いつもみたいにのんびりと辺りを暖めている。
昨日と少しも変わらない今日。
だけど、すいりゅうさんがいない。
早く帰ってきてよう。
ぼくは松の木に登って遠くの空に目を凝らした。
どこかがきらっと光らないかな。すいりゅうさんはとってもきれいだから、きっとすぐに分かるよ。
翔けてくるすいりゅうさんの姿を思い浮かべて、にんまりと頬が下がる。ちょっとだらしない顔だけど、誰も見てないからいいよね。ここで待ってたら、空を翔けるすいりゅうさんが見れるね。一番初めに見て以来だよ。すっごくきれいなんだよね。えへへへへ。
すいりゅうさんがお出かけしちゃったのは寂しいけれど、楽しみも出来たよ。
すいりゅうさん、早く帰ってきてね。
強い風が吹く松の木の天辺で、ぼくはすいりゅうさんを待った。
帰ってきたら誰よりも先に、おかえりなさいを言いたいんだ。
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