蛮族続々

 かの手斧と丸楯の蛮族どもが北の大川を越えて攻め入ってきたのは去年の初冬だった。

 予兆はあった。その年は、蛮族どもの地が天候不順だという話がたびたび届いていたし、秋には予想されていた通りに、不作だという報が流れた。

 不作となるとやつらは、その穴を埋めるための略奪行を活発に始める。小舟を巧みに使い、川を辿って、驚くほど深い地域にまで現れて無防備な村々を襲うのだ。

 略奪行が始まったとわかったところで、村を捨てさるわけにもいかない。貧しい農村の民が行く当てもなくさ迷ったところで、どの道野垂れ死にするだけだ。

 できる事と言えばせいぜい、我が村だけは狙われないよう、神の慈悲を希うことぐらいだ。

 蛮族どもは一通り荒らしまわった後、おっつけ送り出された領主の兵と、義理立て程度に矛を交えて、形ばかりの和睦を済ませ、戦利品を持って引き上げていく。

 そして領主は、もとより厚くもなかった懐をさらにすり減らした分を、領民から税を取り立てて埋め合わせるのだ。


<お題画像>

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