Chapter9 『行くぞ』 9-2

(果てしない空間の道に、わずかに不安を覚え。 夏樹は菖蒲を見た。)


『運転しているところを見ると。 頼りになると思ってしまうな。』


『良くこんなところを平気で走れる・・。』


(菖蒲は、いつもの笑顔を浮かべながら、

鼻歌交じりにハンドルを握っていた。)


(サラサラと流れる細い黒髪、一つに縛った後ろ髪が艶やかだ。)


「菖蒲って、神経図太いところあるよな?」


「・・っ・・はい?」


(何のことか分からず、菖蒲は不思議そうに、視線だけ夏樹に少し振り向いた。)


「まるで、ドライブに丁度良い、銀杏並木かどこかを走っているみたいだ。」


「ははっ。 白さん程ではありません。」


(夏樹は、菖蒲の笑い声に、自分の足元を見た。)


(高級リムジンの、特注ソファーがある事も無視し、白は、広い後部座席の下に

自前の布団を持ち込んでいた。)


(自分の部屋さながらに、毛布をかぶって眠りこんでいる。)


「・・ぐぅ・・。」


「はは。」


(夏樹が苦笑した。)


「出ますよ。 風見市です。」

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