Chapter8 『遅刻予定のアポイント』 8-7

(晃をからかった後、聖は再び橘に振り向いた。)


「橘、市長のところへ行くのは、6時過ぎると思う。 その時、僕と来てくれ。」


(橘は、驚いた。)


「アポイントは、キャンセルではないのでしょうか。」


「先方も。 6時まで、待っていて下さるとは思えませんが?」


(晃も瞬いた。)


「お前が会いたがるなんて、珍しいな。」


「欠片が多く眠っているからな。」


「違うよ。」


(三人は、歩き出した。)


「彼は、僕が遅れるって知ってる。」


「僕は昔から常習だから、その予定で時間を取ってくれてるよ。」


(晃は不思議そうな表情を浮かべた。)


「何だ、知り合いか?」


(歩くたびに、真っ白な聖のスーツが朝日に翻る。)


「僕らの知り合いさ。」


「見てご覧。」


(聖は、資料のファイルを、銀の指輪が光る長い指先で示した。)

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