第11話
「よく逃げなかったな」
「逃げた方が良かったですか?」
可彦の言葉にギスバルトは肩をすくめた。
まだ空気がひんやりしている中、ギスバルトは遠征隊を引き連れてやってきた。その数は五十ほど。この兵力で再び、今度は形振り構わずに攻め込まれれば、やはりソタニロ側になすすべはなかっただろうと可彦は感じた。
「まぁ……処刑をするのもあまり気分がいいものではないのでな」
そういってギスバルトは肩をすくめる。それから腰に差した剣を抜いた。それを掲げるとその切っ先が朝日を浴びて煌めく。
「これより刑を執行する」
隊列を組んでいた遠征隊がそれぞれの武器を掲げる。
「貴殿には敬意を表する」
「ありがとう」
可彦はなんとか笑みを浮かべながらそう告げるとギスバルトの前にひざまついた。
「言い残すことは?」
「えっと、約束は守ってね。この国の安全、みんなの安全、あと僕の遺体のこと」
「承知。他には?」
「うーん……」
可彦はしばし考えてから付け加える。
「次に会ったら仲良くしよう」
「……わかった。次に会ったらな」
そして可彦の意識は途切れた。
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