第4話

 照りつける日の光の下を一行は歩く。

 日差しは強く、防寒用だと思っていたマントがここでは日の光を遮るのに役立つ。ネフリティスもバルゥも毛布を頭からかぶり日差しを避けていた。

「砂じゃないんだね」

 可彦は歩きながら足元を見る。

 可彦の足元にはこぶし大の石がいくつも転がり、周りを見渡せば大小さまざまな岩が転がっているのが見える。大砂漠と聞いて地平線まで広がる砂丘を想像していた可彦にとって、その光景は少し意外なものだった。

 そのなかに石を積まれた塔が建っていたり、大きな岩に削り書かれた文字などがある。どうやらそれが道を示すものらしかった。

「大きな砂丘が広がるところもありますが、殆どはこんな荒地です」

「シカシ暑イナ」

「そんな鎧来てるからだよ」

 ぼやくバルゥを可彦が笑う。

 バルゥの身に着ける金属製の鎧は容赦なく熱せられ、毛布をかぶっていなかったらとても着ていられなかっただろう。

「脱いだら?」

「断ル」

 既に日は高くなり、その光が容赦ない。

「一晩泊まって、日の出前に出立して暑くなる前にたどり着くつもりだったんですが」

「そうだったんだ」

「はい」

 歩き続ける一行。

 短くなった影が、再び少しづつ長くなり始めたころ、ネフリティスが前方を指差した。

「見えました。あそこです」

 指差した先に緑色の何かが小さく揺らめいている。その緑色がオアシスであることは近づくにつれてはっきりしてきた。

「まだ無事なようですが……」

 ネフリティスが呟く。

 小さいながらもその全貌がはっきりと見えてくる。

 緑色なのは生い茂る木々。

 その傍にゆらゆらと光を反射しているもの、おそらくは波打つ水面。ちいさな湖だ。

 そして木々と湖の間に建物が見える。

「無事そうですね」

「チョット待テ」

 安堵の息を漏らしたネフリティスを、バルゥが制する。

「人ガ倒レテイルゾ」

 バルゥはそういうと背負った突剣を抜き、腰の短剣も構える。ネフリティスも杖を構え、可彦もあわてて腰に吊るした戦鎚に手を伸ばす。

 バルゥを先頭にゆっくりと近づいていく。

 オアシスの建物がはっきりと見えるあたりまで近づく。その建物の上には櫓のようなものが建てられているのも見える。

 確かにそこには人が倒れていた。正確には死体が倒れていた。絶命しているのはすぐにわかる。なぜならその死体の眉間には一本の矢が突き刺さっていたからだ。

「ヒトリジャナイナ」

 見渡せばその周りに、同じように眉間から矢を生やした死体が、首を巡らせただけでも他に三体ほど倒れている。

 いずれの死体も簡素な鎧を身に着け、傍には武器であろう剣が転がっている。

「誰がこん」

 可彦が言い終えるよりも先に、可彦の意識は消失していた。

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