第59話 パーティ結成
「ごほん」
冒険者証を眺めながら、感慨に浸っていると受付嬢の咳払いが聞こえた。
「す、すみません」
「それでは、少し長くなりますがギルドの仕組みについて説明いたします。まず、冒険者ランクについてですが――」
受付嬢の話を僕なりに要約するとこうだ。
冒険ランクは、F〜SSSランクに分けられている。といってもSSSランクは未だかつて誰も到達したことがないそうだが。
冒険者ランクを上げるには、条件を満たすと受けられる試験に合格する必要がある。試験内容は、職業ごとに求められる能力を持っているかが試されるが、戦闘職ならば同ランクの魔物をパーティで討伐できるかが戦闘力が最低条件となる。
そしてらその試験を受けるための条件というのは、討伐ポイントだ。魔物を倒すと、その魔物の強さ、魔物討伐の貢献度などが考慮され、ポイントがつくのだ。
そのポイントは冒険者証を身につけている限り、蓄積されていき、冒険者証に記載される。
討伐ポイントは、単独でゴブリンを討伐してやっと一ポイント。Cランクの魔物であるオークの単独討伐で百ポイントといったところだ。
なお、ゴブリンを複数で倒した場合や、それよりも弱い魔物を倒した場合は一ポイントも入らない。
各ランクに必要な討伐ポイントは
Fランク 十ポイント
Eランク 百ポイント
Dランク 千ポイント――
と十倍ずつ増えていき、SSSランクともなると十億もの莫大なポイントが必要となる。ほとんど不可能に近い。
しかも、必要ポイントを満たしたランクより三つ下のランクの魔物を倒してもポイントが得られないのだ。
例えば、Aランクの必要ポイント、百万ポイントを満たした冒険者が、Dランクの魔物を倒してもポイントを得られず、Cランク以上の魔物の討伐でしかポイントが手に入らない。
これによって、弱い魔物を延々と狩り続けてポイントを貯めることは不可能となる。
よく出来たシステムだと思う。討伐の貢献度でポイントが決まるということは、治癒士やサポート役にもポイントが入るということだ。治癒士なんかは怪我人が出ない限り活躍の場が無いので、多少不利かもしれないが、それでも公平度は高いように思う。
そこまで聞いて、疑問に思ったことがあったので質問した。
「この仕組みって誰が作ったの? ポイントのところとか、かなり高度な技術が必要だと思うんだけど」
自動で魔物の強さや貢献度を計算してポイントを算出するなんて、並大抵の技術じゃ出来ないはず。
「創造神様です」
「そ、創造神?」
「はい、大昔に創造神様がこの冒険者証と仕組みをおつくりになられたそうです。正確には冒険者証を作る魔道具を、ですが」
そう言って受付嬢さんは、さっき僕達が名前と職業を書いた紙を入れた魔道具を指さす。これがその創造神が作ったという魔道具なのだろう。
「なるほど、神様が作ったっていうなら納得だね」
でも、創造神とやらはどうしてこんなものを作ったんだろう。何が目的だったんだ?
「納得頂けたようですので、続いてランクが上がる利点について説明いたします――」
ランクが上がると、冒険者ギルドから様々な恩恵があるそうだ。腕利きの職人を紹介してもらえたり、情報を提供してもらえたりするらしい。
更に、ランクが高くないと受けられない依頼というのもある。このギルドの二階はランク制限がある依頼だけが置いてあり、Bランク以上しか入ることが出来ない。二階に上がることは、このギルドにいる冒険者の一瞬のステータスとなっている。
そして、何より大きいのがSランクになった時、神から神具を与えられるらしいのだ。神具とは、読んで字のごとく神の使う武器や防具、道具のことだ。
その性能は人の作るものの域を越えていて、非常に強力だ。売りに出せば城が建つ程だといえばその凄さが伝わるだろうか。
僕の持つ、魂の力を抑え、修復する力のある指輪も神具に当たる。魂を修復する道具など、人にはとても作れない。この能力を知れば、魔法使いや魔道具職人が私財をなげうって欲しがるだろう。
その神具はSSランクになった時にはより強力なものが与えられるらしい。なんでも一振りで千の兵を吹き飛ばしたとか。それはすこし誇張されているのかも知れないが、人知を超えた力であるのは間違いない。
それ以上のSSSランクになった時にどのようなものが与えられるかは誰も知らない。
神様が神具をくれるのか。これもどういう目的があるんだろう。ご褒美を用意してランク上げの意欲を増大させる為? いや、多くの魔物を倒させる為なのか? だとしたらどうして……。
考え込む僕をよそに受付嬢は説明を続ける次の説明はギルドの規則についてだった。
数分間後、受付嬢はようやく話し終え、ふぅと息を吐く。
「以上で説明は終わりです。今お話したことはそこに置いてある《ギルドの手引書》にも書いてありますので、ご参照ください」
受付嬢が指差す方を見ると、確かにギルドの手引書と書かれた本が置いてあった。かなりくたびれているが、読むのには問題ないだろう。
「あ、パーティ登録をしたいんだけど」
さっきの説明に含まれていた、パーティ登録を早速行うことにする。パーティ登録をしていると依頼を個人ではなくそのパーティで受けられるのだ。他にも、パーティの方が、指名されて依頼を受けることが増えるので、ほとんどの冒険者がパーティを作っている。
「パーティ登録ですか、お二人だけで登録されるのですか?」
パーティは基本的に四、五人で作るものらしいので、二人というのは少ないのだろう。ましてや僕達はまだ若い。経験不足で少人数だと何かと危険だ。
「うん、しばらくはこの二人でパーティを組むつもりなんだ。他の人を入れるつもりも、他のパーティに入るつもりもないよ」
僕は後半の言葉を強調して言った。僕達の会話に耳を傾けていた冒険者達は残念そうにため息をつく。
ギルドマスターの試験の後から、僕達をパーティに入れたいのか狙うような目で見てくる人が多かったんだよね。特に派手な魔法を使ったセリアを欲しがる人が多かった。セリアが美少女だっていうのも関係してるだろうけど。
だから、面倒な勧誘を避けるために、牽制として聞こえるように拒絶の言葉を口にしたのだ。
「了解しました。パーティ名はどうされますか?」
パーティ名か、考えてなかったな。僕がこの異世界で冒険者として活動していく名前だ。大事に決めないと。
異世界、異世界か。そう考えて真っ先に思いつくのは、僕が異世界だと気づいた理由、二つの月だ。
「《
確か、父さんのパーティは《
「いい名前」
『まぁ、悪くはねぇ名だな』
「かしこまりました。ではその名前で登録をしておきます。本日は依頼をお受けになりますか?」
「そうだね、一つくらい受けてみようか」
僕は依頼が貼られている掲示板へと向かい、その中から依頼を探す。
「これなんてどうかな。薬草採取だって」
「かまわない。けど、どうして?」
「最初の依頼って言ったらやっぱり薬草採取でしょ」
前世のラノベの定番だし、外せないよね。
当然そんなことを知らないセリアは不思議そうに首を傾げている。
『くだらねぇ理由だな』
ソルにはラノベについて話したことがあったので、僕の言っていることがわかったようだ。ソルの呆れたような言葉は気にせず、僕達は初依頼の薬草採取をするため、冒険者ギルドを出たのであった。
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