キャラメルの味

プロローグ

私の中で1番古い記憶。

とってもとっても暖かい記憶。

右手にはお父さんの手。

左手にはお母さんの手。

遊園地に行って大きな観覧車に乗ったんだっけ。観覧車に乗る時も私はずっと二人の手を離すのをぐずってそのまま家族3人、幅の狭い席に並んで座ってたんだ。

観覧車からおりてそのまま3人でベンチに座った。お父さんが右手を私の口元に持ってきてキャラメルを食べさせてくれた。

うちはちょっと貧乏だから遊園地に売ってるポップコーンとかアイスとか贅沢して買えなかったけど、そのキャラメルはアイスなんかよりずっと美味しくて、甘くて。なんか分からないけどすっごく、すっごい嬉しかった。

ずっとこの時間が続けばいいのにって思った。遊園地にいなくてもいいからずっとお父さんと、お母さんの手を握っていたかった。

それで私は充分幸せだった。

でも

幸せはそう長くは続かなかった。